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【完結】紅ノ姫君-アカノヒメギミ-

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 何時にも増して警察が増えている。制服の警官は勿論、私服の警官も、そいつの雰囲気で判る。一般人の様に振る舞っていても、荒事に備えている緊張感は隠せない。そして警察がどういう場所を、どういうサイクルで見回っているのかを把握すれば、誰を狙うにしろ何処で行うにしろ、誰にも見つからずに事を行う事が出来る。増員が来る前の方が寧ろ難しかった。だけど、そんなことはもう昔の話だ。
 狙う相手は誰でもいい。誰でもいいが、それだと選ぶのにかなり迷ってしまうので、ちょっとした縛りを入れている。その縛りに引っかかったのを毎回狙っている。ちょっと歩いていれば、お目当ての相手が見つかり、場所と時間を狙って何時もの手を使う。実に簡単なものだ。
 だから今日もその縛りに該当する相手を探す。探すのだが、何故だか今日はそれが少なかった。何時もは狙い始めて三分も経たない内に、該当者が見つかると言うのに、今回は少ない。日が経つにつれ、皆家に引きこもるから、減るのは当然とはいえ、何か違和感を感じる。
 数分歩いてようやく見つけた。たかが数分が永遠に感じられる程じれったい時間だった。さて、あれがうまい具合に移動してくれれば、私はありがたく今回も人を●す事が出来る。彼の動き次第で、こちらも何時もの手を使えばいい。
 しかし、彼は本当にうまい具合に移動してくれた。彼は人気のない方向に向かい、更に何故か廃ビルの中へ入っていった。廃ビルなら場所を選ぶ必要はないかもしれない。見つかりにくいかもしれないが、工夫すればなんの問題にもならない。しかし何故態々廃ビルに入ったのか、何か用があるのだろうか。まぁあんな金髪をしている不良さんなら、人に言えないような隠し事があるのかもしれない。それこそ廃ビルでないと出来ないような隠し事が。
 廃ビル元はゲーム施設だったのか、一階にはパチンコの筐体が立ち並び、彼についていった二階にはビリヤード代が埃を被って散乱していた。月明かりが窓から差し込む程度の明かり、作業をするには少々くらいが仕方がないだろう。彼は二階の中央付近まで歩いていた。頃合いか、人気のない場所で態々何時もの手を使う必要はない。いくつか行程を取り払う事が出来る。
 後ろからそうっと近づく。●す。今日はどうやって、この子を料理しよう------

「こんばんは、殺人姫さん。」

 金髪の彼は急に声を出した。この声は、

「八時間ぶり、と言った方がいいかな、染崎明日香さん。」

 振り向き、ウィッグをとった彼は、烏山高校三年生、青原雪人だった。