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【完結】紅ノ姫君-アカノヒメギミ-

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「…そうだな、それで頼む。僕は女子のアドレスあんまり持ってないから、谷川、頼めるか?」
「いいよ。簡単だし、報酬はなくていいよ。」
 谷川案の作戦は恐らく完璧だ。ある一点で、殺人姫であろう人物にはそれがいかないことも、偶然ではあるがまた完璧だった。時間的にもかなりいい。
「そうすると僕にはやることが出来たな。」
「若木町へ行くのか?」
「ああ、確認すべきことと、準備しなければいけないことが。」
 先ほどは打ち止めと言ったが、それはこの谷川家内に限った話だ。手はまだある。それが分かった時に、柏木弘人への連絡というジョーカーはとっておく。
「直ぐに行くわ。ありがとな、谷川。」
「あー、青原さ、」
 部屋を出ようとした直前に呼び止められた。
「何?」
「うん、なんつーか、何でそんなに事件に関わろうとしてんの?」
「関わる?否、僕はそんなつもりは…」
 そう、僕はこの時点で、「赤い魂のことを知りたい」ということから、「この事件を解決したい」という考えに変わっていたのだ。関わるなという、ヒロさんの言葉を無視してまで、この事件に没頭している。「赤い魂」の究明の延長上ではあるのだが、僕は今、そんなことを考えもしないで、谷川の部屋を飛び出そうとしていた。
「うん、そうだな、僕はいつの間にか、この事件を解決しようと思ってるな。」
「だろ?何だか他人にあんまり興味がない青原にしては、なんつーか珍しいというか、ありえないよね。」

 他人に興味がない、さっきも、そんなことを言われた気がする。

「まぁ、それも確かに、そうかもしれないな。そう言われたことあるよ。」
「あっそう、でもさ、青原さ、お前変わって来てるんだよ。きっと。」
「変わってるのかな。」
「今年に入ってそんな気はして来たけど、ここ最近は顕著になって来てるな。他人に興味が出て来たんだろ。」
 他人に興味がない。確かに、この認色の眼は人の魂の色が見え、人の性格が一目で分かってしまう、便利なものである代わりに、この眼だけで人を判断して、決めつけて、碌に付き合ったりしていない気がする。僕の友達は少なく、大輔と谷川と、花笠さんに染崎さん、そして五条さん。前三人は、何だか気があって、後ろ二人は赤い魂から興味があって話していたけど、基本的には他人と避けていた。
 でも、赤い魂を通じて、僕は他人に興味が出て、
「…それは、良いことなのかな。」
「高校生ごときが事件に介入するのは良くないことだろうけど、普通、他人に興味が湧いて来たってことは、良いことに違いないよ。」
「そうかな。」
「普通の人ならな。」
「何だよそりゃ、どういう意味だ。」
「お前の他人への関心のなさは、何ていうかパーソナリティだと思ってさ。正直言うと、らしくないよ。お前の行動。」
「…良いのか悪いのかどっちだよ。」
「お前以外の人だったら良い傾向だけど、お前は悪い。青原は他人に無関心を貫いていなきゃ駄目だ。」
「谷川、割と酷いこと言うね、お前。」
「そんなことないよ。青原は人の心を見透かして、その上で無関心だから良いんだよ。一々相手に深入りしないだろ?深入りされる方はたまったもんじゃないかもしれないのにさ。」
 …なるほど、それは、この認色の眼で知る必要のない感情まで知って、僕は態々それに突っ込みを入れない。隠している心の傷を、知りもしないやつにずかずか指摘されると不愉快だろうなと思って、僕は見て見ぬ振りをする。
「日本人的な奥ゆかしさっていうか、無関心さがお前には必要だよ。今回は事件を解決したがってるみたいだけど、多分後悔するよ。そうやって他人の内側にずけずけ入り込むのは、好きな人だけにしておけよ。」

 好きな人だけ、か。

「後悔するかもしれないけどさ、でも今回動かなかったら、どっちにしろ後悔すると思うんだよ、僕は。」
 好きな人は、もう他人じゃない。だからどんどん近寄って、興味を持って、接する。
「どっちにしろ後悔するならさ、どうせなら全力を出したい。」
 『五条さんのこと好きなの?』
 五条さんのことを、嫌いなわけがない。そしてそれと同じくらいに、
 僕は染崎さんのこと、嫌いじゃないよ。