【完結】紅ノ姫君-アカノヒメギミ-
「友達だよ。同じクラスでさ、学校にはあんまり行ってなかったけど、あいつは私の事気にかけてくれててさ、その時はうざったいくらいにしか思ってなかったかもしれなかったけど、皆、私の事を腫れ物を扱うようにしか関わってくれなかったのにさ、あいつだけは、私の事を考えてくれてたんだって、今になって思うよ。物を壊したりするのは、悪い事かもしれないけど、自分を粗末に扱う事だけは、絶対に止めろって、私を止めてくれたんだ。」
物を壊すのも人を殴るのも、止めた方が良いと思うけど。
「死ぬ程痛い思いしてグループを抜けてさ、あいつが私の為に何かをしてくれたから、私もあいつの為に何かしてやれないかって思ってさ。でも、あいつは私が何かしなきゃいけない程に、追いつめられるような状況に陥るような人間じゃなくってさ。私と違って人として出来てると、思ってたんだ。
そう、思ってたんだ。」
あいつとは、誰だ。
「でも、あいつも追いつめられてたのかな、あれは。凄く怖かったけど、それでも、初めて、私が、あいつに何かしてやれるんじゃないかって思ってさ。」
何かとは、何だ。
「でも、そんなことをしても、アイツの為になんて、なるわけが無かったんだ。私はその時、怖くて怖くて、すげえ怖くて、でも怖い事でも、あいつの為だと思えば、やれると、やったんだ。でもそれは、自己満足でしかないんだよ。」
罪の告白に、近かった。そう感じた。でも彼女は肝心な部分を話そうとしなかった。
あいつとは誰で、そいつの為に何をしたのか。
そして、あいつは、何に追いつめられていたのか。花笠さんは、何を。
彼女はまた振るえていた。教室よりも冷房が効いているとはいえ、肌寒さを感じるような室温とは言えない。
「早退した方が、いいと思うよ。」
「ああ。」
ふらり、と花笠さんは立ち上がった。精神の異常は、体調にも異常を来していたようだった。
「…花笠さん、僕が、」
「アオハラ、送ってくれないか。」
「え、あ」
言おうとした事を先回りされてしまった。
「いいよ、今日はもう、授業を受ける気になれないから。」
「ありがとよ…あとアオハラ、以前に知り合いに警察の人がいるっつってなかったっけ。」
「いる…けど…。」
その質問の意図が、見えなかった。
「…そっか。」
肩を貸して、駐輪所まで歩いた。
作品名:【完結】紅ノ姫君-アカノヒメギミ- 作家名:疲れた