【完結】紅ノ姫君-アカノヒメギミ-
花笠カオリ十七歳。
烏山高校三年生C組十九番。
部活動には所属していない。帰宅部員。
身長は約180cm。体重は公言されていない。
性格は豪放磊落で男勝りで姉御肌。
金色の長髪は恐らく校則違反。足首までありそうな長いスカートも恐らく校則違反。
まゆげが薄い。
元ヤンキーで小学生の頃にとある暴走族に所属していたらしい。
常備している金属バットはその頃から使っている(何に?)相棒らしい。
その風貌から距離をとる生徒もいれば、その性格から彼女に惹かれている生徒もいる。
誕生日は知らない。
趣味は野球で、得意なことも野球。
父親との二人暮らし。
魂の色は、オレンジ、橙色だった。
そう、だった。
今の彼女の魂は、三日前に見た橙とは違った色だった。
赤い、赤い魂。
魂の色が変わるということは、十七年生きて来た僕の人生の中では見られなかったケースだ。細かくいうと、明度が変わることは多々ある。魂の色が明るくなれば、文字通り明るい心理状態を、暗くなれば、これまた文字通り暗い心理状態を表す。元気があるか、落ち込んでいるか、ということだ。
しかし色層そのものが変わるケースはない。見たことがない。
しかも赤い色、今まで数人しか遭遇していない赤い色だ。
これは一体どういうことなのか。今までに色が変貌するケースに遭遇した試しが無いため、僕は酷く狼狽した。授業の内容も、記憶に刻まれること無く、左から右に通り過ぎていった。
おかしい、あんな現象は今まで一度も無かった。魂とは、その人自身を表す、証明書のようなものだ。彼女の橙は統計的に考えて、優しさ、率直、友好なんかを表す色だった。赤い色は…わからない。サンプルとする人が少な過ぎて、わからないのだ。
赤い色は、遠い昔、誰かが赤い色だったのは覚えている。しかし誰だったか覚えていない。その人以外だと、染崎明日香、五条五月、そして色が変貌した花笠カオリの三人しかいない。
一人は優等生の天然少女、一人は無口なミステリー少女、一人はがさつなヤンキー少女。一体どこに共通点があるというのだ。赤い魂の色は僕に混乱をもたらすだけだった。
わからない、その人自身を表す魂の色が変わったということは、それは人間自身が変わったということなのか、今僕の眼が捉えている彼女の姿は、三日前の花笠カオリとは違う、全く別の人間だとでもいうのか。
なんで彼女の色は、赤く、
まるで、返り血を浴びたかのように、紅く染まっているのか。
作品名:【完結】紅ノ姫君-アカノヒメギミ- 作家名:疲れた