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【完結】紅ノ姫君-アカノヒメギミ-

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 だからその空間にまで足を運んだ。




 見なければ良かった。






 人が寝ていた。

 金髪で、短髪の男性だった。

 その人と目があった。寝ているのに、目があった。
 彼は目を見開いたまま眠っていた。


 目が開いていたのに眠っていたことが何故分かったのかというと、それはとても簡単な答えだった。


 彼は永遠に目を覚ますことが無いからだ。

 何故、永遠に目を覚まさないことが分かったのかというと、

 首が、胴体から離れている人間が、目を覚ますと思う訳ないだろう?


「……………。」

 首どころじゃない、首以外の外傷は殆どないと言っていい。


 腹部以外は。


 大きく開かれた腹部から内蔵がそこら中にまき散らされ、小腸は運動会の万国旗のごとく両壁から腹部に向かって吊るされており、腸からしたたる血液が彼の金髪に付着している。


 彼の首は、彼自信の両の腕に抱かれていた。


「……………なん」

 なんだろう、これは、などと呟く暇もなく、僕の胃袋は限界を告げた。

「………………うぶ」

 自らが戻したものと、鼻の内側にねっとりと張り付く血の臭いが、戻したにもかかわらず更に吐き気を催した。


 あぁ、そして、初めて知った。

「お………げ……」

 死んだ人の魂の色って、

 黒いんだ。