【完結】紅ノ姫君-アカノヒメギミ-
格闘ゲームでしこたま対戦し、クレーンゲームで菓子を捲き上げ、レースゲームで5万km程走行したところで時計は七時を指していた。放課後にゲームセンターで遊んでいるような学生が帰宅するには些か早い時間のような気がするが、若木町は例の連続殺人事件がリアルタイムで起こっているので、まともな神経をしている人間ならこんな場所に遅くまで居着こうとは思わないだろう。そもそもこんな場所に来ている僕らはどうなのかってことは考えないようにしておく。
大輔と谷川とはここで別れることにした。僕には本屋に寄る用事があったからだ。ここの本屋はこの辺ではかなり広く、品揃えも豊富で、端末で本の検索も出来る優れた書店だ。古本屋しかない赤坂町とは大違いだな。
将来のことを今直ぐ決めなければならないと考えているわけではないが、さりとて決めないわけにもいかない。しかし大学に進学する気は毛頭ないので残念ながら参考書に用はない。僕はあくまでこの眼を活かすような仕事に就きたいのだ。といっても今思いつくのはカウンセラーかネゴシエイターくらいしか無いのだが。ともかくこの二つの職に就くにはどのようなことをすれば良いのかちょっと調べるつもりで居残ったと言うわけだ。
谷川の言っていた殺人姫の犯行時刻は九時以前だったか。正確には九時以降に遺体が見つかっているから、犯行時刻は必然的にそれ以前になるわけだ。
七時も九時以前だな、もたもたせずにさっさと書店に行って物色した方が良いだろう。
殺人姫は女性だと言われている、というか女性だから殺人姫と言われているのか。今までの、思い出したくもない凄惨な殺害方法が、本当に女性によるものなのだろうか、そう簡単には鵜呑みに出来ない。鵜呑みに出来ないからこそ、こうまでも僕は危機感が足りなかったのかもしれない。
作品名:【完結】紅ノ姫君-アカノヒメギミ- 作家名:疲れた