【完結】紅ノ姫君-アカノヒメギミ-
赤坂町烏山高校前駅からバスで二十分ほど揺られていると若木町駅前ロータリーに到着する。田舎の様相を呈する赤坂町と違って若木町は最近に都市化の進められた街であり、控えめなオフィスビルが幾つか建ち並び、朝の若木町駅はビジネスマン共でごった返す。駅前らしくアーケードもあり、少し離れた場所にはマンション群も存在する。都心へは六十分以上かかかるものの電車一本で行けてしまう、赤坂町からあまり離れない人にとってはなかなか交通の便の良い街だ。そもそもここに来る為の交通の便が悪いのが難点だが。
駅に着くと五条さんと別れた。一応誘ったが丁重に無感情に断られた。まぁ彼女はゲームという柄ではないだろう。
ゲームセンターで僕たちが遊ぶのはもっぱら対戦格闘ゲームの類いだ。僕はゲームは好きだが別段上手くはない。大輔が弱いだけだ。
「おいちょっとは手加減しろよ!」
対面から大輔の声が聞こえるが無視する。ゲームに集中したい。
僕は結構こういった類いの対戦系のゲームが好きだ。何故ゲームが好きなのか、というと、僕の眼にも関係してくる。認色の眼は他人の魂の色を見ることが出来る。否応なく、だ。この眼で不自由を感じたことはない、だが自分が特殊であるということに優越感を抱くこともあれば、孤独感を味わうこともままある。
ゲームをしている間は、相手を見ることなく、相手とコミニュケーションをとることが出来る。ゲームをしている間は、自分が特殊な眼を持っていることを忘れ、普通の人間であることを体感出来るからだ。同様の理由でテレビや電話も好きだ。認色の眼は便利で、嫌いなどと思うことはない。しかし僕も多少センチな気分になることもあるものだ。大輔、谷川とこうやって遊ぶのもそう悪いものじゃないのさ。
画面が僕の勝利を知らせた。さて次は谷川の番かな。大輔と対戦するよりは楽しめる。
作品名:【完結】紅ノ姫君-アカノヒメギミ- 作家名:疲れた