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ちょっとした出会いから

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 福山瑞穂は父母はもちろん、双方の祖父母からも愛情をいっぱい受けて成長していった。
 父も母も一人っ子であったからどちらの家にとっても初孫、そしてただ1人の孫である。
 子供1人に親2人、祖父母4人といった図式で、1人に対して6つの懐があった。子供に贅沢をさせてはいけないと言いながら、それぞれの心の中では、私が1番瑞穂のためにしてあげている、1番役に立っている、とお互いを牽制しているところもあった。
 父母はそういった自分の親たちの心理を見抜いていた。

「プーさんのぬいぐるみなんていいわね」
「リカちゃん人形が人気あるのよ」
「リカちゃんハウスも欲しいわ」
「おままごとに興味を持ちだしたみたい」
「そろそろ自転車があればなぁ、補助輪付きの」
「バレエを習わせようと思っているんだけど」
「英語教室は早いうちから入った方がいいらしいわ」
「ピアノよりもバイオリンなんてどうかしら」
「たまごっちがね、学校ではやってるんですって」
「学習塾に通わせたほうがいいかしら、中学は私立のほうがなにかと安心だし」
「ねえ、私立学校の入学金やら授業料って高いのよね」
    ・・・・・・・・・・・・・・・・・・
と際限なく続いていく要望に、祖父母たちは喜んでポン、とお金を出してくれた。 
 
 結局、彼らの孫は瑞穂1人だけだったから。4人ともまだまだ働ける年齢で、十分すぎるほどの収入を得ていたのだから。

 一方瑞穂はバレエも英会話もバイオリンも続かなかった。
 好奇心はあっても、少し難しくなってくると繰り返し練習するのが面倒で、壁を越えられずに投げだしてしまい、結局辞めることになった。 練習するよりも『セーラームーン』や『くれよんしんちゃん』や『ドラゴンボール』や『ちびまるこちゃん』や『ポケモン』や、や、や、を見ているほうが楽しいし楽だから。
 おばあちゃんが言っていた。
「いやなこと無理にすることないわよね」

 母は、あれっ? わたしの時とえらい違うこと言うわ、と思ったが、
「少なくとも学習塾には行くのよ」
と言って、嫌がる瑞穂を車で送り迎えしていた。

 そして大学までエスカレートに進学できる私立の中学生となった。
 その頃になると、祖父母たちは前後して退職の時期となり、自分たちの生活を考えなければならなくなっている。
 それでも、学校の授業料は任せておきなさい、と言った手前、退職金から捻出していた。


 大学生になって、社会へも少し目を向けるようになってきた瑞穂は気が付いた。老いていく祖父母。今はまだ元気に活動しているが、足が痛い、背中が痛い、歩くのがつらいなどと言い、同じことばかり繰り返し言っているおじいちゃんもいる。

 もしかしてこの人たち、私が面倒見ていくのぉ!? 
 おじいちゃんにおばあちゃんに、お父さんお母さんもいれたら、6人をわたしひとりで面倒見るのぉ!?
 いやいや、お母さんはまだまだ元気で40代だから、お母さんがおじいちゃんやおばあちゃんを見ていくんだよねぇ、
と胸をなでおろすのだった。