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「だから写真にも映らないっていうの? 未遠、あんたマンガの読み過ぎだよ」
 モリヤは鼻で笑った。
「……本物だとは思うけどね」
 ディザイアと言った、あの男の言葉を疑う者は誰もいない。疑うまでもなく冗談だと、皆信じ込んでいる。けれどモリヤは、あの男は嘘を吐いていなかった、と直観していた。
「あんなに妄想の世界に生きてる奴、初めて見た」
「妄想? 本物じゃないの」
「本物だよ。本物の気違い」
「……ううん、そうじゃない……」
 未遠は必死の形相でかぶりを振る。モリヤはやや苛立ってきた。
「いくらなんでもヴァンパイアなんてことは有り得ないよ。心配いらない」
「でも、あの人は」
「いないんだよ、そんなもの、この世界には。いないからこそ、ああして何も考えず無邪気に夢見てられるんじゃないの。あたしはそんなに興味もないけど、……とにかく、いないよ!」
 モリヤに上からかぶせるように言われて、未遠は黙った。それきり不安な沈黙が、家に着くまで二人の間に蟠っていた。


 <ウェブサイト「ノスフェラン」 お知らせブログより>

 4月25日(月) 投稿者 : 美針

 お茶会にいらしてくださった皆様、誠に有り難う御座いました! お陰様で、此の度も夢のような時間を過ごすことが出来ました。お集まりのロリータちゃん、貴婦人、王子様……皆様とても麗しくていらっしゃって、美針はもう涎と鼻血が止まりませんでした(爆)ワタクシとしたことが、はしたない所をお見せして申し訳ありません(汗)皆様がおステキすぎたんですもの〜。
 お写真も早めに整理してUPする予定です♪ ちなみに美針はヴィクトリアンメイデンのブラウスに、エクサントリークのコルセット付スカートで参りました。

 お茶会のあと、仲良しの方々とキリストン・カフェでお食事をしたのですが、そこで合流したD様に美針はもう大興奮。だって皆様、本物のヴァンパイア様がアリスアウアアを纏って目の前に現れたんですのよ……!
 お写真も撮らせて頂いたのですが、デジカメの調子が悪かったのか(酷使しすぎたかしら)、不発で……掲載して皆様にお見せ出来ないのがもの凄く残念です。貧血気味で、日中はあまり動けないとの事でしたので(ね、本物でしょ?)、来週のクリムゾン・ヘヴンにしつこい程にお誘いしておきました! 来ればD様にお会い出来るかも?! 5月4日、場所は十三階ですよ〜。勿論ワタクシも参ります。参戦の予定の皆様、宜しくお願い致します(ぺこり)。


 <4月26日22時17分付 あるオンラインニュース>
  
 吸血鬼のしわざ? 献血ルームで盗難事件

 26日19時10分ごろ、新宿区の新宿西口献血ルーム職員から「献血された血液が何者かに持ち去られた」と新宿署に通報があった。同署の調べによると持ち去られたのは血液バッグのみで、その他は一切荒らされた形跡がないという。また、成分献血で採取されたぶんのバッグも残されており、全血のバッグだけを選んで持ち去ったと見られる。

 新宿西口献血ルームでは20日と21日にも同様の事件が起こっており、また23日には東口の献血ルームからも血液バッグが盗まれたという届けがあった。職員らは「厳重に管理しているし、営業時間内は人の出入りも激しい。吸血鬼でもいるのだろうかと思う」と頭を抱えながらも、「善意で献血頂いた貴重な血液。血液バッグ一つで、助かる命も助からないことがある。いたずらでしているなら、すぐに止めてほしい」と訴えている。


 <ブログサイト「eternal」より>

 4月27日(水) 投稿者 : ミオ

 ヘイ! ヘイ! ヘイ! のランキングのコーナーで、一瞬D'ARCが映った。D'ARCが出るとはっきりわかっている時は音楽番組をつけないようにしているのに、ランキングまでは思いつかなくて、うっかりした。だけど僕は本当は守屋ユヅルが今でも好きだから、ちょこっとでも見られたのは嬉しかった。あいかわらずかっこよかった。
 でもモリヤはやっぱり機嫌が悪くなって、また夜中に出掛けてしまった。モリヤが出て行く時間には僕はもう眠っているが、モリヤがどれだけそうっと出て行こうとしても僕は廊下を歩くひた、ひたという足音で目が覚める。そしてバタンという扉の音、ガチャッと鍵がまわる音を夢うつつに聞いて、涙が出そうに悲しくなる。
 家の中にモリヤがいないと心細くて、死んじゃいそうに寂しい。家族のなかでモリヤだけ誰とも血がつながっていなくて、僕とモリヤも実のきょうだいじゃないけど、僕は生みの親よりもモリヤを近く感じる。モリヤが出掛けたあと、取り残されてベッドに潜っているとだんだん目が冴えてきて、いろんなことを考えてしまう。クラス一背の低い彩香が、リサとガスパールのポーチを持ってお手洗いに行くのを見た。二番目にチビの僕も、今年に入ってだいぶ背が伸びた。育っているのは身長だけだと思いたい。お風呂に入って自分の体を見るのが、毎晩こわい。今日は大丈夫だった、アレはまだ来ない、と思ってホッとする一日の終わりに、だけど明日は解らない、と思ってこわくなる。
 ……月曜の夜はそんなことをぐるぐる考えて眠れなかったせいで、学校では一日眠かった。帰りに、モリヤはいったい何処で夜を過ごしているのだろうと思いながら、何となく新宿に寄り道したら、紀伊國屋書店でディザイアさんとバッタリ会った。全身アリスアウアアで、蜘蛛の巣のように繊維を絡ませたカットソーに、黒ラメのスキニーデニムだった。ディザイアさんは怖いくらいの美形で、僕は正直とても怖い。怖いのに、ディザイアさんと少し歩いて、喫茶店でお茶まで飲んでしまった。ディザイアさんの喋り方はBUCK-TICKのあっちゃんにちょっと似ていると思う。何の話をしたか、あんまりよく覚えていない。家はどこなのかとか、親のこととか、世間話だ。ディザイアさんは毒々しいぐらい真っ赤なローズヒップのお茶に、小瓶に入れた赤い液体を垂らして飲んでいた。『ポーの一族』で、エドガーとアランもバラの香料を入れたお茶を飲んでいたなと思い出した。


 <榊真司からケイ・アッシュに宛てたEメール>

 差出人 : 榊 真司<s-sakaki@****.ne.jp>
 送信日時 : 4月29日 金曜日 23時44分
 宛先 : Ash<ashestoashes@******.edu>
 件名 : 相談

 担当しているクライアントに関わる話を第三者に打ち明けるのは褒められたことではないが、君とぼくの間柄に免じて大目にみてもらいたい。ぼくは君の口の堅さを全面的に信頼しているし。
 最近、あるクライアント(21歳・女性)がヴァンパイアを自称する人物と接触した、と言ってきた。彼女はゴスロリ・ファッションを好んでおり、同好の士と集まることがあるらしく、その会合に「自称ヴァンパイア」がいたようだ。もちろん彼女もそれを真に受けてはいないが、非日常の装いをするうえでのなりきりごっこというよりは、「自分がヴァンパイアである」という妄想に取り憑かれているように見える、とのことだった。
作品名:ファッション 作家名:柳川麻衣