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イミューンシステム

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 電源の来ていないでは自動ドアは使いものにならないと思い、どうやって中に入ったものかと悩んでいると、自動ドアのガラス越しに広がるビルのエントランスに明かりが灯っていく。そうこうしている内に、軋んだ音を立てながらドアが開いていく。どうやら、セントラルからの供給ではないルートで電気が通っているらしい。
 エントランスまで行き、背中越しに再び軋んだ音を聞きながら、周囲を見渡す。
 照明はついているが、光を取り入れるための窓は全て植物によって覆われているので、中はお世辞にも明るいとはいえない。
 フッと音もなく、いくつかの照明が消えた。
 消えることなく灯り続けている照明はどうやら道しるべの役割となっているらしく、右手に見える細長い通路だけがぼんやりと暗がりに浮かぶように照らされていた。
 監視カメラがあるようにも見えないが、とりあえず俺はビルの主の無愛想な歓迎を受けることにした。
 薄暗い通路を進むと突き当たりでエレベーターが見えてくる。俺がそこまでたどり着いた時ちょうどエレベーターの扉が開いた。実際に俺の動きに合わせているんだろう。エレベーターに乗ると階数のボタンが無かった。あるのはただ△印のボタンのみ。素直にそのボタンを押すと、エレベーターは一度ガクンと揺れてから重々しいと共に上昇を開始した。その揺れと音にエレベーターが反重力式でないことに驚くが、旧世紀のビルにそんなものがあるはずもないと思い直す。
 チンっと言うこれまたレトロな音ともにエレベーターが止まる。エレベーターか真っ直ぐに伸びる薄暗いリノリウムの廊下が目に入った。
 エレベーターから真っ直ぐに伸びる薄暗いリノリウムの廊下を進んでいくと、突き当たりに部屋があった。
 今度は自動ドアじゃないその観音開きの扉を開くと、飛び込んできた光のまぶしさに目が眩む。そこは先ほどまでの薄暗い廊下と違い、光に満ちていた。


 20畳ほどの空間は白い光で満たされているが、電球は見あたらない。壁や天井が発光しているのだとすぐわかった。壁、床、天井などに光陰乾湿寒暖調節の素子が組み込まれた現代の一般的な造りだからだ。部屋の中心には椅子が備え付けられており、それ以外の調度品は見当たらない。
 だだっ広い部屋に椅子一つ。どうすればいいかわからず立ち尽くす俺の脳内に通信のアラームが響いた。
作品名:イミューンシステム 作家名:武倉悠樹