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イミューンシステム

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 前世紀の震災以降排他地域に指定され、セントラルの管理からも外された地域だ。立ち入り禁止になっていたかはわからないが、住んでいる人はおろか、ライフラインの供給もなされていない地域のはずだ。本当にここになんらかの施設があるんだろうか。
 疑念は深まる一方だが、騙されてもしょうがないと腹を決めたばかりだということを思いだし開き直る。明日直接出向いて、自分の目で確かめれば良いことだ。登録のページを閉じると、PCCからログアウトした。


 翌日、PCCのアラーム音で、労働時間からきっかり3時間前に眠りから起こされると、ルーチンになった支度をして、家を後にした。指定された「クラスB?2 アルファタワー47フロア」へ出向き決められた労働をこなす。
 労働はその名目ゆえ、配慮として肉体を行使するような単純作業ではないものの、達成感と目標を見いだせないという点においては似たようなものだ。こんな時間で人間の社会性と個人の尊厳を実感し、精神を健康に保てるとはとてもじゃないが思えない。
 規定の8時間をただこなすだけに注力し、労働を終える。
 ビルを出ると無人タクシーを捕まえて、例の住所を告げると、やはり立ち入り進入禁止区域に指定されていたらしく、その手前で降ろされた。
 労働中はその使用が禁止されているため自律プログラム以外のプログラムを休止させておいたPCCを立ち上げ、ネットに繋ぐと地図を呼び出す。21世紀の姿をした廃墟を両の足で歩く。
 錆びて腐食したフェンスを何とか素手でねじ切り、瓦礫を踏み越えると、ようやく目的のビルのたどり着いた。
 運良く倒壊を免れたビルは緑一色に覆われ元の壁面の色など伺い知ることはできない。蔦とシダに覆われていないのは辛うじて正面玄関にそびえる自動ドアだけだ。しかしこの地域一帯はとうに排他地域に指定され電力の供給もなされていないはずだ。
 周りを見渡して、大地に斜めに立つ電柱が目に留まる。現在のネイションはセントラル管理による電源供給がなされており、あんな有線による送電など潰えて久しい。
 本来の意図に反して鍵の役割を果たしている、打ち捨てられた文明の長物の前で俺は立ち尽くしていた。
作品名:イミューンシステム 作家名:武倉悠樹