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イミューンシステム

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 今現在の労働システムは個人の存在意義の確立と人間の社会生の維持のための機能だが、俺はそうは感じない。
 個人の資質があらかじめ把握され、能力的に可能な事が分かりきっていて、さらに言えば機械化すれば済む仕事を、スケジュール通りにこなすことにどんな意味を見いだせるのか。俺や例の書き込みの主のような存在そのものがその問題点を浮き彫りにしてるのではないか。
 考えれば考えるほど、心の内で焦燥感が大きくくすぶっていくのを感じていた。
 ある意味構造的に完成されたともいえる世界を実現した人類。その恩恵によって生きる人間が触れてはいけないタブーが俺を揺さぶる。
 餓える事ない世界。
 争う必要のない世界。
「構造的完璧さ」に満ち足りた世界は人に何をもたらすのか?
 心の内に潜んでいた飢えに気づいた瞬間、それは大きく顎を開き牙を剥く。
 この、大きく虚ろで、今も広り続ける穴をどうやって埋めることができるのだろうか。


 ふと、自動スクロールのまま放っておいたBBSの画面が勝手に止まった。
 気づかぬうちに自動スクロールを解除したかと怪訝に思いながらも、なにげなく表示されている書き込みに目が止まる。
「よりリアルを感じたければ」と書かれた書き込みとそれに続くアクセスポイントのパスが書かれていた。
 その不思議な書き込みに若干の興味を覚えるが、怪しげなページにアクセスはしたくない。
 少しでも情報を探ろうと、この書き込みに対する反応を見ると、「上のページ、バグでもウイルスでもないけどよくわからん」「俺も行ってみたけど同じくよくわからん」「なんか変な入力フォームがあるけど意味不明」等の意見が見受けられた。
 どうやら、危険性は無いようだが、中身のあるものでもないらしい。
 思わせぶりなイタズラといったところだろうか。
 この手のBBSでは匿名性ゆえにこういった書き込みは珍しくもない。この書き込みもそういったものの一つだろうと思った時、あることに気づいた。
 書き込みにしっかりとIDが付与されているのである。
 匿名性を保つこのBBSではプログラムの改変によって、IDの表示は文字化けを起こしその意味がなくなるようになっているのだが、この書き込みに限っては文字化けが起こっていない。
作品名:イミューンシステム 作家名:武倉悠樹