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イミューンシステム

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 あのゲームの舞台は、天文学、生物学、物理学、おそらくありとあらゆる自然科学の見地からシミュレーションを繰り返し生み出せれたリアルの極みにあるような異世界なのだろう。そこにさらに作為的な娯楽性を融合させたものを作るなど並大抵の労力でないことは想像に難くない。しかしそんな努力の結晶を前にしながらも、俺が感じ続けた空虚感は一体なんなのか。
 ありきたりの賞賛を眺め続けるのが苦痛になってきたので、俺はBBSのシステム画面から別の画面へとアクセスした。
 そこは同様のBBSでありながら決定的にさきほどのBBSと異なる空間だ。
 セントラルによってネットも全て管理されている今、法的にも技術的にも匿名掲示板というものは存在しない。全ての書き込みにはネット上で統一されているネイションIDが付与されるためだ。
 しかし今俺が開いている掲示板はすこし違う。IDの表示プログラムを敢えて壊し、バグを発生させることで、IDの表示を不安定にし、限定的な匿名状態を生みだしているのである。
 書き込み者の情報がセントラルによって管理されていることは変わらないが利用者間では匿名性が実現されているのだ。
 非常にグレーゾーンの存在で、書き込みや閲覧で法的処罰を受けたものが居るとは聞かないが、主催者側では取り締まりの対象になったという事例をよく聞く。結局イタチごっこで一つ閉鎖されれば、別のBBSが開設されるという状況だが。
 俺がここに来たのは匿名掲示板ならではの変わった意見が聞かれるのではと考えたからだ。なにに対しても、賞賛、非難、忠告、広告、さまざまな意見が玉石混交で眠る
この場なら一風変わった視点が見れることがある。
 トピック一覧から「RoB」を探し出すと、書き込みを閲覧する。
 現れた匿名での書き込みの数々は期待通り、賛否を基調にして多岐の論調に別れていた。
 全文を読むこと無く、単語単語に目を通しながらそれぞれの書き込みの文意を把握し、全体を流し読みする。
 ふと一つの意見に目が止まった。
 その書き込みの要旨は「リアリティはあるがリアルでない」と言ったものだった。
作品名:イミューンシステム 作家名:武倉悠樹