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イミューンシステム

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 点滅するウィンドウが邪魔くさいが、消すことはできない。ネイション構成員全員に支給されている高性能コンソール、通称PCCの使用の自由の一切は個人に委ねられているし、事実俺はゲームの使用に主に使っているが、本来のPCCの目的はセントラルによる個人の監視だ。
 遺伝子解析技術が発達し出生前診断が徹底されている現代、人は生まれる前にすべての能力適正が判断され仕事を割り振られることになっている。それの管理を完璧に行うため、個人情報や行動履歴、人間関係の情報に至るまでその全てがPCCを通してセントラルに集められているのだ。
 このメッセージはその労働タスク管理の一環で、定期的に時刻を伝える役割を担っている。こちらの任意で削除はできないのだ。
 こんなことをせずとも、寝ている間も脳内に埋め込まれた小型擬脳素子がPCCとリンクしていて、労働の時間になれば強制的に意識を覚醒させるなんてこともセントラルの権限には含まれているので寝坊することすら許されない。そもそもこの小型擬脳素子とPCCとのリンクは人が生まれたときから死ぬまで維持されており、どこで何をしていようがセントラルの管理から逃れる術はもたないというのに。


 セントラルからのシステムメッセージの終了を待って、俺はネット回線をオープンにする。
 馴染みの、ゲームに対する情報や意見を延べ合うBBSへと接続。「RoB」のトピックをざっと流し読みする。
 そこに書いてあることは大体予想通りだった。つまりは賞賛の嵐だ。ほとんどは俺も感じたような感想でトピックは埋め尽くされていた。
「他銀河の星系に飛ばされるというフィクションをノンフィクションと呼べるものにまで高めた作り込みは文句なし。しかもそれをゲームとして昇華させているのだから見事と言うしか他無い」要約するとそんなところだ。
 しかし、俺が見たかった意見はそんなものではなかった。
 そんな最高峰のゲームをやってなお、満たされない空虚感を感じた奴は居ないんだろうか。
作品名:イミューンシステム 作家名:武倉悠樹