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身代わり和尚

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「死んだ人を悪く言ってはいけません。あのおじいさんだって生きている間に何か一つは良いことをしたでしょう。それに皆も何か一つは悪いことをしたことがあるでしょう。仏様はちゃんと皆のことを見ています。大切なのは今を頑張って生きることです」
 田吾作はその場を取り繕うために、そう言いました。
 村人たちは口をポカーンと開けています。まさか、田吾作の口から、そんな言葉が出ると思わなかったからです。
「おい、田吾作の奴、本当の和尚さんみたいだな」
「ああ、おらたちに説教こいたぞ」
「ありゃ、本物の和尚さんじゃわい」
 村人たちは田吾作のお説教に、すっかり感心して本当の和尚と認めるようになりました。

 それは雪が降るとても寒い日でした。
 村に見知らぬ男がやってきました。そして村の家を一軒一軒まわっては「泊めてくれ」と頼んだのです。
 ところが村人たちは男の汚い身なりを見ては、誰ひとり男を泊めるどころか、食べ物すら与えませんでした。男が去った後に塩を撒いた村人もいます。
 とうとう男は道端で倒れてしまいました。男の身体に雪が降り積もります。
 そこへ田吾作が通りかかりました。
「これ、もし……」
 田吾作が声を掛けますが、男はピクリとも動きません。それどころか、身体を触ってみれば、冷たくなっているではありませんか。
「こりゃ、いかん」
 田吾作はお寺まで男を担ぎ込みました。そして、沢山薪を燃やして男の身体を暖めます。
 そこへ村人たちが田吾作に差し入れにやってきました。村人たちは男を見てびっくり。
「和尚さん、何でどこの馬の骨ともわからん男を寺に入れたんじゃ?」
 田吾作は逆に村人たちに尋ね返しました。
「お前さんたちはこの男を知っているようだね」
「ああ、今日、村中の家をまわって泊めてくれって言ってただ」
「皆、冷たいね」
 田吾作が村人たちを横目でちらりと見ました。
「んだども、どこの誰かもわからねぇもん泊めるわけにはいかねぇ」
 村人の一人が言い返しました。
「困っている時はお互い様じゃないか。もし、お前さんたちが旅先で行き倒れて、放りっぱなしにされたらどういう気分だ?」
 村人たちは皆、頭をうなだれています。
 その時、男が目を覚ましました。男は「うーん」と声を上げ、身体を起こしました。
「こ、ここは……?」
 男がキョロキョロとまわりを見回しながら言いました。
作品名:身代わり和尚 作家名:栗原 峰幸