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ゲップ羊と名ピアニスト

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「おぉ、すげぇじゃん。元大臣の爺さんが居たり?親父さんは射撃のオリンピック選手だったこともあるのか?すげぇ!」
「ねー、そうでしょ、ほら、言ったじゃないですか、生まれ変わった先で幸せになれるかもって」
 3人の間には浮かれた空気が満ちていた。
「おい、なぁおい、豊崎さんよ。俺の分もあるんだろ?その書類」
 転生後の人生に希望が指しているのと言うことがわかった後は現金なものだ。久保田が自分の分も見せろと豊崎にせっつく。
「あぁ、そうでしたね、久保田さんにもお見せしないと。あぁ、もうこんな時間じゃないですか」
 豊崎は腕時計に目をやりながら、焦って久保田の分の書類にも手を伸ばす。
「時間とかあるんですか?」
 豊崎の言葉に耳聡く疑問を抱いたのは黒川だ。
「あ?えぇ。そうなんですよ。輪廻転生に同意いただいた後一定時間で自動的に輪廻転生が始まってしまうので、それまで、資料に目を通していただかないといけないんですよ」
「へーそんな風になってるんですか」
「そうなんです。えっと。久保田さんの転生後はっと。……えー……。んん?」
「おい!どんなんだ?見せろ」
「あ、ちょっ!」
 待ちきれない久保田は豊崎の持つ書類に手を伸ばし、強引に奪い取った。
「…………」
「どう、久保田。いい感じ?」
「なんだよこれ!!!!」
 あらん限りに振り絞った久保田の怒声が狭い部屋に満ちた。力の限りで書類を机に叩きつける。
「……羊……ですね」
 豊崎が聞こえるか聞こえないか位の音量で答えた。
「羊?」
 まだ書類を見ていない黒川は久保田の怒りも、豊崎の答えも理解ができない。久保田が叩きつけた書類を脇からそっと見る。
 黒川の書類には赤ん坊の写真が貼ってあった部分。久保田の書類はそこには生まれたばかりでまだ目も開いていない動物の仔の姿を移した写真が貼られていた。
「え?なにこれ?」
 黒川が慌てて顔を上げるが久保田は肩で息をしているだけで、目も合わせようとはしない。
 豊崎が、その黒川の問いに答えた。
「仔羊ですよ。畜生道って奴です。いやー、これで合点が行きました。お二人は練炭自殺をなさったんですよね?」
「えぇ」
「最後、火はどちらが点けました?久保田さんでは?」
「えっと、どうだったかな?」