朱く染まる日
やじのテンションが異様に上がる。話の内容を全員が理解したのだろう。久良木は顔を曇らせる。
「ここじゃダメ?」
「落ち着いて話せないよ。場所、移る気ない?」
「ごめんなさい、二人きりにはなりたくなくて」
今度は五百住の顔が曇る。「わかった」と寂しげに答えると、制服のポケットから四つに折られた紙を出し、それを久良木の膝に乗せる。
「出来れば直接伝えたかったけど、仕方ない。それじゃあね」
ブーイングをするやじに見送られ、五百住は“3組”の教室を後にする。
久良木は、彼の姿が消えるのを確認した後、慌てて紙をポケットへと突っ込んだ。綺麗に畳まれた紙がぐしゃりと潰れたが、それに気づく余裕はなかった。