小説が読める!投稿できる!小説家(novelist)の小説投稿コミュニティ!

二次創作小説 https://2.novelist.jp/ | 官能小説 https://r18.novelist.jp/
オンライン小説投稿サイト「novelist.jp(ノベリスト・ジェイピー)」

心の中に

INDEX|45ページ/67ページ|

次のページ前のページ
 

 野蛮な侵入者は全員で六人。黒ずくめの衣装に、顔は頭巾で覆っている。裏手からは卯兵衛やおみつの寝室がほど近い。
 侵入者が卯兵衛たちの寝室に入ろうとしたその時。
「何奴?」
 廊下には角材を手にした平次が仁王立ちに立っていた。
「こやつから片付けろ!」
 侵入者の頭らしき大男が叫んだ。すると、侵入者は一斉に平次に向かってくる。闇夜に光る白刃が風を斬った。
 だが、平次はそれをすべて躱し、角材で次々と侵入者を打ちのめしていく。この時の平次の身体の中には、武士、青木平内であったころの血が甦っていたのだ。
 平次はあっと言う間に四人もの侵入者を打ちのめしてしまった。打ちのめされた四人は伏せたまま、ピクリとも動かぬ。
 さすがに乱闘を聞き付け、卯兵衛とおみつも目を覚ましたらしい。二人とも「何の騒ぎだ」と寝室から出てきた。
 頭と思しき大男が、その機会を見逃すはずもなかった。大男は小刀をおみつの喉に宛てがう。
「その角材を捨てろ! そして有り金を全部、出してもらおうじゃねえか」
 頭巾から覗く鋭い眼光で、そう凄んだのである。
 さすがに卯兵衛も狼狽え、おみつは顔面蒼白である。
「早くしろい! この女がどうなってもいいのか?」
 大男は刃をおみつの喉に食い込ませるように、押し付けた。
「あ、ああ……」
 おみつは恐怖に震え、足がすくんでいる。言葉すらまともに出せぬ始末だ。
 その時だった。
「ぐはっ!」
 大男が悲鳴を上げて、小刀をその手から落とした。
 見れば、もう一人小さな男の小刀が、大男の腰にしっかりと食い込むように刺さっている。
「こ、これは、仲間割れか?」
 平次が唸るように呟いた。
 小さな男が頭巾を取った。その顔を見て、卯兵衛の顔が凍りつく。
「お、お前はまさか……、茂吉!」
 大人になったとはいえ、その面体には幼き日に苦楽を共にし、兄弟の契りまで交わした茂吉の面影が残っていた。
「あんちゃん、済まねえ。俺を番屋に突き出してくんな」
 茂吉が小刀を床に放った。
「うううううーっ!」
 その時、おみつが腹を押さえ、急に屈み込んだ。
「いかん。やや子が!」
 卯兵衛が叫ぶ。平次は「産婆を」と走りだそうとするが、茂吉がそれを止めた。
「すぐに湯を沸かすだ」
作品名:心の中に 作家名:栗原 峰幸