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お焚き上げ

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 それでも私はお守りを燃やせなかった。お母さんがいなくなってからも、ずっと。
 今年になって気が変わった理由は自分でもよく分からない。去年の大晦日の晩にお母さんの夢を見たからかな。内容はほとんど覚えていないのだけれど。
 古いお守りを溜め込んでいても何一つ良いことなど無い。それは知っていたから、躊躇する気持ちは全く起きなかった。


 境内の一角に設けられた受付に行くと、紙袋に入った大量のお守りを受け取った男の人がチラリと私の顔を見た。ちょっと嫌な感じだったけど、問題なく納められた。

 炎の中にお守りが投げ込まれる。
 私はその様子を少し離れた所から眺めていた。



 ふと気がつくと、私の近くにいた人達が悲鳴のような声を上げていた。

(なに?)

 グルリと周囲を見渡して異常が無いことを確認した私は、最後に原因を見つけた。



 私の身体が燃えていたのだ。

作品名:お焚き上げ 作家名:大橋零人