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お焚き上げ

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 べつに私は信心深いとは思っていないけど、お正月には必ず神社に参拝してきた。
 昔は家族と一緒に。今では私一人で。

 今年も近所の小さな神社に来ていた。
 此処ならそんなに並ばなくても済むし、甘酒も貰える。
 お母さんも「地元の神様が一番大切なんだよ」と言っていたし、遠くの大きな神社に行くよりずっと良いと思う。

 去年までと全く代わり映えのない私。
 違うのは右手に少し大きめな紙袋を持っていたこと。その中には去年までのお守りが詰め込んであった。全てこの神社で買ったお守りだ。
 昔は両親が買ってくれた。今では自分で買っている。
 ああ、そうだ。お守りを「買う」とか言っちゃいけないんだった。
 子供の頃、お母さんに注意されたことがあったな。


 両親は一年毎にお守りを神社に納めて新しいものを頂いていた。
 でも、私は自分のお守りをずっと持ち続けていた。実際に持ち歩いていたのは新しいものだったけど、それ以前のお守りも家に保管していた。
 昔、それを見たお母さんが言った。

「お守りはあなたを守るために災厄を吸い込んでいるから、毎年 神様にお礼を言ってお返ししなくてはいけないのよ」
「でも、燃やされちゃうんでしょ? なんか かわいそうだよ」
「かわいそう? お守りが?」
「……うん」
「佐緒里は優しい子だね」

 お母さんは笑顔で私の頭を撫でてくれた。

「でも、かわいそうじゃないんだよ」
「なんで?」
「お守りは役目を果たしたんだから」

作品名:お焚き上げ 作家名:大橋零人