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狂い咲き乙女ロード~2nd エディション 愛ゆゑに人は奪ふ~

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 そう言って背を向けるとさっさと行ってしまった。さすがの森さんも呆気に取られている。そして結局僕たち二人だけが取り残された。
冷静というか何と言うか…もう僕のボキャブラリーにこの事態を表現できる語彙はないや。などと森さんの腕の中でぼんやり考えていると、
「よかった! 本当に無事でよかった…」
 よっぽど心配だったのか、森さんにぎゅうっと抱きしめられてしまった。
「く、苦しいよ…それに…その」
 体の密着度がちょっと…ね。いくらホモセクシャルの気がある僕でもここまで女の子と密着するのはちと刺激が強い。この体勢では森さんの体温をダイレクトに感じてしまうではないか。でもちょっといいかも・・・くっはー、駄目だ、駄目だ、駄目だダメダメダメメ! ダメメって何だよ、全く。僕は何を考えているんだ! 彼女は同士だ! 共にこれから戦火を潜り抜けていく予定の戦友なんだ! そんな彼女に対して好色・淫猥なことを考えてはいけないんだ。
 僕よ、自重しろ。クールになるんだ。素数を数えて落ち着くんだ…だがしかし、しかし、僕は今なんだかときめいてしまっている。ついさっき殺されかけたというのに! あんな目に遭っておきながらも! この胸の高鳴りは一体何だ?

――――まさか恋?

 いや、そんなことはないはず。僕が、この僕が女の子に心揺さぶられるなどということはあってはならないはずだ! もう僕は迷わないと誓ったはずだ。それなのに何故? 
 だが今までの人生を振り返ってみて、僕は同性とも異性とも親密になったことはなかった。精神的にも肉体的にもだ。正直言って僕は男の子についても女の子についてもよく知らない、そんな中途半端な人間なのだ。
 千秋には『男』を意識させられた。でもそれはそれでいい。
 問題なのはッ、今僕は森さんにッ、『女』を意識させられてしまっているッ! それが大問題なのだッッッッッ!
 こんな妄想癖に加えて精神分裂気味のどうしようもない僕を同士と呼んでくれた彼女に――窮地に立たされた僕に救いの手を差し伸べてくれた彼女に――

――――恋に、落ちた

 のか? いや、違うよ。あはははははははは、僕は何を考えて…妄想だよ。全ては僕の空虚な妄想だ。身勝手な妄想に過ぎないんだ…
チガウチガウチガウチガウチガウチガウ、コレハボクノホントウノキモチナンカジャナイ…

――――ソレナノニ

「本山田くん? どうしたの? どっか痛いの?」
 そう言って僕を抱きしめてくれる森さんの体は温かかった。
 僕は――

 今この瞬間だけは――

 このままでいたいと心の底から思った。

 そしてこのまま死ねたらいいと思ったのだった。