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テッカバ

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「死体を発見したのは?」
「この乾(いぬい)です」 小太り学生が斜め後ろに立っている、長身で手入れの行き届いていない長髪をした男を目で示す。「俺が猿渡(さるわたり)で、乾と同じ四年生。で、雉山(きじやま)が三年」
 全員そこの高槻先生のゼミ生ですよ。と、小太り学生こと猿渡は、床でシートを被せられた高槻の死体を見ながら付け足した。
 乾は神経質そうな仕草で髪をいじり、小柄で髪を必要以上にワックスで立てた雉山は、ごめんなさいと言いながらも、内心はまるでそんな気はない生意気な子供のような目で信楽さんを睨みつけている。偏見かもしれないが、チヤホヤされて、我がままに育ったタイプに見えた。
「死体発見時の状況をお聞かせ願えますか?」
「は、はい。俺、二限目の講義が終わったので、暇つぶしに研究室に帰ろうと思って……ドアを開けたらこの通りでした。二限目が終わってすぐだったので、12時20分ぐらいだと思います」
 時刻は私の記憶と一致している。それから十分ぐらい野次馬だらけで大騒ぎ。十分で警察が到着して今は12時半過ぎだ。
「とにかく警察に話を聞かれると思ったので、同じゼミ生の猿渡と雉山を電話で呼びました」
「事件の前に被害者と会われたりは?」
「……しました。うちの大学の一限目は9時からなんですけど、一日の講義が終わった後……そのぉ…………実験をする予定だったので、八時ごろに教授も含めて四人で集まって打ち合わせをしてました」
 思わず「何が実験だ!」と言いたくなる。逆らえない、か弱い少女をいたぶろうとしていたくせに!
 ようやく彼らが怯えている理由が分かった。殺人事件が恐ろしいんじゃなく、自分達の脅迫が警察にばれるのを恐れているのだ。
 人でなしめ……こんな状況でも保身のことしか頭に無いのか。
「でも、俺達全員一限目の講義を取ってたから、9時前にはここを出たよ! その時だって教授はピンピンしてたさ。解剖すりゃ死んだ時間が分かるんだろ? さっさと済ませて解放してくれよ!!」
 押し黙っていた雉山がヒステリックに声をあげた。
 うわぁ……。こいつ思った通り、自分中心のガキまんまだ。相手に対する尊敬心ゼロの語り口に思わず吐き気がした。こいつは信楽さんたち警察を市民の奴隷ぐらいにしか思ってないんだろうな。最低。
作品名:テッカバ 作家名:閂九郎