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老後の大切なもの

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その3


さて話を戻して、この夏夫を失くした友人は急に独りになってから精神のバランスを崩し性格が一変した。電話が掛かる度に寂しくてたまらんと言い、話のきっかけですぐ泣き声になる。現在は娘の勧めでジムと整形外科へ一日置きに通い、その場での人との触れ合いで安らぎを覚えているようだ。


これまでしっかりした人とおもえたのは、単に夫という虎の威を借る狐だったとしか思えない。彼女には優しい娘がいて、遠方から日に三度電話をくれてなにくれと生活指導をしている。
いつも彼女が優しいと言っている娘は、母が辛そうに訴えて来ることで鬱的になりカウンセリングを受けているそうだ。

母娘が支え合って暮らすのは美談ともなるが、お互いが負の方向へと引っ張り合えば悲惨な状態になる事態も無くはない。母娘とはいえ、お互いが自立して相手を客観的に観る余裕を持たないと共倒れにもなりかねない。

娘の方は親孝行をしているのだろうが、これからは親の方が自立するのが子供への孝行だと認識を改めなければいけない。

年を取るということは親子の立場が逆転することでもある。
充分大人になった子を思うきもちを切り替えて、自分自身が自立することで子供に心配をかけないようにすることが子供にとって何よりの孝行だ。


作品名:老後の大切なもの 作家名:笹峰霧子