小説が読める!投稿できる!小説家(novelist)の小説投稿コミュニティ!

二次創作小説 https://2.novelist.jp/ | 官能小説 https://r18.novelist.jp/
オンライン小説投稿サイト「novelist.jp(ノベリスト・ジェイピー)」

火曜日の幻想譚 Ⅴ

INDEX|9ページ/120ページ|

次のページ前のページ
 

592.人形使い



 人形を操ることをなりわいにする人がいる。人形使い、パペッティアなどと呼ばれるが、うわさに聞く限りとても大変な仕事のようだ。

 例えば、長期間使用していると当然人形も古くなる。それに流行などもあるので、大抵の人形使いは人形を定期的にリニューアルしなければならない。でも、当の人形のほうはそうは思っていないようで、彼らの大半は自分はまだまだやれると思っているんだそうだ。まあ、普通に考えれば、人形は捨てられたら一巻の終わりだ。むざむざと自分からゴミ箱へ行くわけがない。それ故に、人形は何があっても捨てられてなるものかと反抗する。人形使いはそれをなだめすかしたりだましたりして、どうにかゴミ箱へと足を運ばせるのだ。

 そうやって古い人形を捨て、新しい人形がやってきてもまだまだ気は抜けない。人形の中には、この時点でもう既に生命を宿しているものがいる。自我を持つ彼らは、主の言うことなど聞きたがらずとても反抗的だ。そんな人形たちに人形使いは、どちらが立場が上かを徹底的に教え込まなければならない。なあなあでやっていると、いつか人形に取り込まれてしまうからだ。
 だが、こういう人形は、一度忠誠を誓うと非常に優秀になることが多い。その自我のおかげで打ち合わせでの意思疎通がスムーズにできるため、素晴らしい芸を披露できるからだ。

 そのようにして人形と円満に仕事を続けても、まだまだ油断はできない。むしろこれからが一番大変なところだ。
 人形使いという職を長く続けていると、いつしか自分が操っている側か、それとも操られている側か分からなくなってくるというのだ。確かに人形を操っているはずなのに、なぜか相棒たる人形に操られている気になってしまうのだ。ここまでくると危険だ。いつの間にか自分が操られる側になってしまう。まるで、鏡の中の自分と入れ替わってしまうかのように。

 そうなると最終的にどうなるか、その人形使いは生きながら人形と化してしまう。ただし、そんな人形が人形使いの手に渡ってしっかりと立場をたたき込まれれば、先述の通り、優秀な人形になれるというのだから、なかなか皮肉なものだ。


作品名:火曜日の幻想譚 Ⅴ 作家名:六色塔