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『イザベラ・ポリーニの肖像』 改・補稿版《前編》

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「アイデアとしては悪くないと思うよ、だが『イザベラ・ポリーニの肖像』にはもう『幻の名画』と言う、これ以上ないほどの大きな付加価値が付いてる、一万の絵を二万で売ろうと言うんじゃないんだ、いくらあの絵が『幻の名画』だとしても一億の付加価値にはならんだろう? まして門外不出だったんだ、それ以外のストーリーを持っているはずもない」
「なければ付ければ良い」
「でっちあげるということか? そんなことには賛成できないね」
「そうではなくて、想像を刺激するんだ」
「でっちあげとどう違うんだ?」
「嘘をつこうと言うんじゃない、あの絵から受ける印象を膨らませるんだ、『モナ・リザ』の謎のようなものさ」
「どういうことなんだ?」
「それは……」

 二人は食事も忘れて話し込んだ。
 ジョーンズが明かした計画、それはウィリアムズにとっても興味深いものだった。
 そして、一通り話し終えると、ジョーンズは思ってもみなかったことを口にした。
「私はクリスチャンズを辞めようと思っているんだ、長年勤め上げて来て、絵画部門責任者と言う肩書がなければもうリタイアしていてもおかしくない歳だ、余生を食うに困ることはない程度に送れるだけの蓄えもある、だからこそ、絵画の取引に携わって来た者として『幻の名画』は何としても世に出したい……私のクビをかけて会社にはオークションを実施させる、だがその後は会社に縛られていては出来ない仕事だからね」
「なるほど……しかし、それは君一人で成し遂げるには荷が重くはないか?」
「それは確かにそうだ、手を貸してもらえると助かるんだが……」
「私と君とは同い年だ、同じ年に君はクリスチャンズに、私はザビエルズに入社して長年競い合ってきたが、君とは親友同士だと思っている」
「それはもちろん私も同じだが……」
「それなのに、私を誘ってくれないのは友達甲斐がないじゃないか」
「しかし……」
「私もいささか会社に縛られているのには飽き飽きしていたところだ」
「君の口からそんな言葉を聞くとは思わなかったな」
「私は世間で思われているほどの堅物じゃないよ、長年絵を売ることばかりに専念して来たが、美術を愛する気持ちは他人に劣らないと自負している、もし良ければ私にも一枚噛ませてくれないか? 私もあの絵は世に出てできるだけ多くの人目に触れるべきだと思う、その仕事を手伝えるなら私のキャリアの集大成になる、ザビエルズのウィリアムズではなく、ジェームズ・ウィリアムズと言う人間が一生かけてして来たことの集大成にね……」