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『イザベラ・ポリーニの肖像』 改・補稿版《前編》

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 十五世紀、ポリーニ家が権勢を誇っていた頃に建てられた館、さすがに豪奢な造りだ。
 だが、壁紙は長いこと貼り替えられていないようでいささか色あせて見えるし、金箔も少しばかりくすんで見える……ポリーニ家の財政状態は芳しくないとは聞いていたが、なるほどそのようだ……。
 もっとも、そのおかげで『幻の名画』に対面することができるのだろうが……。
「ようこそ遠路はるばるいらっしゃいました」
 そう言いながら入って来た大柄な男……ポリーニ家の当代当主、パオロ・ポリーニ。
 ジョーンズにオークションを持ちかけた男だ。
 パオロは世間一般的な貴族のイメージとはかけ離れている。
 貴族らしいおっとりとした、気品あるところはあまり見えない。
 尊大で不遜な態度は、あまり芳しくない意味で貴族的かもしれないが、絶えず辺りの様子を伺っているような眼は油断ならない人物、と言う印象を与えるし、歩き方や喋り方もなんとなく気ぜわしい、不動産か何かで財を築いた辣腕ビジネスマンだと紹介された方がしっくりくる、そんな男だ。
 パオロが当主になったのは数年前、実際、パオロはポリーニ家の財政状態を改善に向かわせていると聞く、体面を重んじる貴族ではなく、実を取る男なのだ。
「お茶でも差し上げますかな? それとも絵をご覧になりますか?」
「では、絵を……」
 時間を惜しんで物事を先へ先へと進めようとするのもビジネスマンらしい。

「この部屋です」
「この部屋の中に……」
「そうです、ここはあの絵専用の部屋なのです、鍵は当主である私しか持っておりません、なにしろ門外不出の家宝ですからな」
 そう言いながら大ぶりな真鍮製の鍵を装飾に彩られた錠に差し込んで回すと、ガチャリと大きな音が響いた……。