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秋月あきら(秋月瑛)
秋月あきら(秋月瑛)
novelistID. 2039
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魔導士ルーファス(1)

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 ビビに強引に引っ張られ、ルーファスはぴょんぴょん跳ねながら影を追いかける。
 松葉杖捜索はなかったことのように忘れられている。
 謎の影は用心深いようで、何度も立ち止まっては辺りを調べている。その都度、勘のいいビビが隠れ、ルーファスは冷や汗を掻きながら一緒に隠れる。
 しばらくしてナースセンターの明かりが見えてきた。その明かりで、ルーファスたちは謎の影の正体を知るのだった。
 謎の影の正体は、松葉杖を持ったディーだった。
 松葉杖を抱えるのではなく、先を下に向けて持っていたために、腕の長い怪物に見えたのだ。
「(期待して損しちゃった)」
 ビビがガッカリする横で、ルーファスはほっとしていた。
「(よかったオバケじゃなくて)」
 ナースセンターに松葉杖を預けたディーが再び歩き出す。ビビはそれを追おうとして、ルーファスに引き止められた。
「まだ追うの?」
「だってこんな夜中に病院を徘徊してるなんて怪しいじゃん」
「ただの夜勤でしょ?」
「ううん、絶対怪しい(はじめて会ったときから思ってたんだよね)」
 アッチ趣味疑惑とかいろんな意味で。
 とめても聞きそうにないので、ルーファスは仕方なくビビについていくことにした。
 再び尾行開始。
 ディーはいったいどこに向かっているのか?
 しばらく歩いた後、ディーはとある病室に入っていった。
 急患が出たのだろうか?
 と、考えるのが普通だが、ルーファスはとある噂話を思い出していた。
 リューク国立病院七不思議の一つ――副院長の怪。
 病院創設以来からずっと副院長だったりする魔法医ディー。最低でも300歳以上なのに、見た目は20代半ばなのだ。
 まあ、そんな存在はルーファスの身近に普通にいたりする。魔導学院の教師であるカーシャだ。
 かつて古の時代、アステア王国が建国されるよりも遥か以前。このウーラティア地方を支配しようとした1人の魔女がいた。と古い文献に記されている。どうやらそれが〈氷の魔女王〉と呼ばれていた時代のカーシャらしい。
 つまりルーファスの周りには、ものすっごいお年寄りが普通にいるのだ。
 ただし、カーシャは人間ではない。そうなると、やっぱりディーも人間ではなさそうだ。
 そして、ディーにまつわる黒いウワサ。
「実はディーって吸血鬼で夜な夜な患者の生き血を啜ってるとかって……」
「うっそーマジで?」
「噂だよ噂。ほら、でもさディーって日中も病院にいるから、たぶん吸血鬼じゃないと思うけど」
 吸血鬼が太陽を苦手としているというのは定説だ。
 腕組みをしてビビは『う〜ん』と唸った。
「ピョンシーってヴァンパイアの亜種だって聞いたことあるよー(ピョンシーに噛まれると、ピョンシーになっちゃうんだっけ?)」
「だーかーらー、ディーが吸血鬼だって決まったわけじゃないから(本当に吸血鬼ならとっくに僕が餌食になってるよ)」
 そんな話をしているうちにディーが病室を出てきた。すぐさま二人は物陰に隠れる。
 ビビは小声でルーファスに耳打ちをする。
「きっと誰かの血を吸ったんだよ(アタシが思うに男)」
 早々と歩き去っていくディーを再び尾行。
 病室から離れ、病院の奥へ奥へと進む。夜の静かな世界から、より濃い闇の世界へ。
 ディーが足を止めたのは霊安室の前だった。
 ピョンシーの隠し場所!?
 霊安室に入っていくディーを追うのは躊躇われる。さすがに霊安室まで追って入ったら、普通にバレてしまう。
 でも、ビビは気になって身体をウズウズくねらせている。
「気になるよ、中に入って調べてみよ」
「ダメだよ」
「なにもなかったら『こんばんわぁ♪』って言っておわりじゃん」
「なにかあったら『こんばんわぁ♪』じゃすまないよ(場合によったら命にかかわるかも)」
「行くよ、ルーちゃん!」
「はぁ!」
 ルーファスが止める前にビビが霊安室に飛び込んでしまった。
 背を向けてゴソゴソしていたディーが鋭い眼つきで振り向いた。その口元は真っ赤に染まっている。
 慌ててディーは口元を拭い、引き出しになっている屍体を安置する函を壁に押し込めた。
「キミたち、見たかね?」
 冷たい口調でディーは言った。
 ルーファスはこわばった顔で首を横にブルブル振った。
 横に立っているビビはビシッとバシッとシャキッと、『犯人はお前だ!』的なポーズでディーを指さした。
「ピョンシーを隠してもムダだかんね!!」
「…………」
 ディーはきょんとしてしまった。
 その隙をついてビビがディーの隠した函を開けようとした。
 ディーは必死になってビビを止めようとする。
「やめろ、開けるんじゃない!」
「この中にピョンシーが!」
「ピョンシーなんか入ってない!」
「ウソばっかり!!」
 そして、ついにビビは引き出しを力いっぱい開けた!
 ルーファスが見守る!
 ディーが顔を歪める!
 ビビが目を丸くする!
 なんと、函の中に入っていたのは缶ジュース。函いっぱいにジュースの缶が並べられていた。
 ビビは1本手にとって缶を調べた。
「トマトジュース?」
「悪いか?」
 ディーは少し怒った様子でビビからトマトジュースを取り上げ、函の中にしまって引き出しを閉めた。
「トマトジュースが好きでなにが悪い?」
 ディーはそう言うが、問題はそこじゃなくて、ルーファスがツッコミ。
「どうしてこんな場所にしまってるのさ?(よりに寄って屍体の近くなんて)」
「この場所で冷やして置けば誰にも飲まれる心配がないだろう(それにこの場所が病院で一番落ち着く)」
 そんなに人に盗られたくないのか!
 オチのついたところで、ルーファスはどっと疲れた。
「私帰るね」
 ぴょんぴょんと跳ねながらルーファスは去っていく。
「待ってよルーちゃん!」
 ビビもルーファスを追って去っていった。
 残されたディーはトマトジュースを1缶開けてグビッと咽喉に流した。
「うん、美味い」

 翌日、ついにルーファス退院の日。
 なんだかんだでディーの策略により、朝一の退院が夕方まで伸ばされた。
 ディーが見送りとかに来る前に、ルーファスはさっさと病室を逃げ出した。
 廊下を足早に歩く途中で、向かいから空色のローゼンクロイツが歩いてきた。
「奇遇だねルーファス(ふあふあ)」
「何しに来たの?」
「キミに会いに(ふあふあ)」
 それなら、そんなに奇遇ってわけでもない。
 ローゼンクロイツは自分の手提げバッグからノートを取り出した。
「はい、これ今日のノートだよ(ふあふあ)」
「ありがとう」
 でも、昨日分だけ抜けている。
「ところで、ルーファス知ってるかい?(ふにふに)」
「なに?」
「またオバケが出たらしいよ」
「……ああ〜」
 なんかいろいろ心当たりがあったりする。
「ロビーで話してるオッチャンの話を立ち聞きしたんだけどね(ふあふあ)。ピョンピョン廊下を跳ねるオバケが目撃されたらしいよ(ふにふに)」
「あはは〜、そうなんだぁ(まさかそれって……)」
「その特徴が、頭から長い触手をなびかせてるとか」
「あはは〜、そうなんだぁ」
 ローゼンクロイツの視線は、ルーファスが後ろで縛ってる長い髪をチラ見している。