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秋月あきら(秋月瑛)
秋月あきら(秋月瑛)
novelistID. 2039
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魔導士ルーファス(1)

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 バタンと病室のドアが閉められ、なんだかビビちゃん敗北感!!
 戦う前から負けた。
 けど、ビビちゃんは強い子、泣かない子。気持の切り替えだって早いんだもん。
「ラアマレ・ア・カピス食べよぉ食べよぉ♪」
 自分の顔ほどもあるピンクボムを両手で抱え、ビビは上機嫌だった。気持の面ではローゼンクロイツに負けたビビだが、ピンクボムを手に入れたので、その点では勝ったと言えよう。
「ルーちゃん、包丁ないの?」
「ないよそんなの」
「えぇ〜っ、包丁ないと皮むけないじゃん!」
「そんなこと言われても、ない物はないよ」
「いいよ、あれ使うもん」
「あれ?(あれってなんだろう、大変なことにならなきゃいいけど)」
 心配顔のルーファスのことなどすでにビビの脳内から追い出され、代わりにピンク色の果物がいっぱいに詰められていた。
 目の前にある果物を絶対に食べる。
 ビビの手の周りの空間が歪む。
 安易召喚だ。
 突如として現れた大鎌がビビの手に握られていた。別空間にしまってあったビビ愛用の大鎌を召喚したのだ。
 大鎌を構えるビビの姿を見て、ルーファスは思った。
「ありえない……(あんなので果物がむけるわけないよ)」
 ルーファスの予想はぴったし当たった。
「あれ、あれれぇ、おかしいなぁ(皮がむけないよぉ)」
 巨大な鎌をぶんぶん振り回したり、あーでもない、こーでもないと、ビビは悪戦苦闘している模様だが、大鎌で果物の皮がむけるわけない。それでもビビはピンクボムとの戦いをやめない。そして、いつしかピンクボムはズタズタに切り刻まれ、見るも無残な残骸になっていくのだった。
 アステア王国でのピンクボムの取引価格は1000ラウル前後である。1ラウルチョコ1000個分、うめぇぼうなら500個分だ。残骸と化した物体に手を合わせ祈りを捧げよう――さよならピンクボム、君のことは忘れない。
 ピンクボムの果実部分は真っ赤な色をしているため、赤い物体が飛び散る床と、その現場に赤い何かが付着した大鎌を持つ少女。しかも、その少女の目は?敵?との過酷の戦いのため眼が血走っている。まさに惨殺現場だ!
「ビ、ビビ、なんか怖いよ(鎌持って眼がいちゃってるし)」
「ラアマレ・ア・カピス食べたかったのに、もういいよ!」
 もうよかない現状が床に広がっているが、プンスカプンと怒っているビビは病室を出て行ってしまった。
 残されたルーファスは、
「……掃除、誰がするんだろう?」
 脚を包帯グルグル巻きにされているルーファスはベッドから降りることもできない。
 部屋中に甘ったるい匂いが立ち込めていく中、ルーファスは床に散らばる残骸を眺めることしかできなかった。
「気持悪くてはきそ……」
 甘い甘い匂いに包まれ、ルーファスはベッドに沈んでいった。