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泉絵師 遙夏
泉絵師 遙夏
novelistID. 42743
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久遠の時空(とき)をかさねて ~Quonฯ Eterno~上

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「でも、あの城跡のこともありますし。最初の時点ではこの場所も幻だったはずなのですよ。でも、今こうして進んで来られている。この世界は確かに再生し始めていると、私は思います」
「道と、線路だけね」
「山も川もです」
 暖野は線路わきに生えている草に手を伸ばす。
「この草も?」
「そうです」
 マルカが言って、立ち上がる。「だから、希望を持ちましょう。さあ――」
 差し出された手を取って、彼女も腰を上げた。
「マルカの言う通りなのね、きっと」
 トロッコに乗る。
「その手では、漕ぐのは無理でしょう。ノンノは休んでいてください」
 手を握った時に分かったのだろう、マルカは言った。
「大丈夫よ、これくらい」
「先は長いんですから。無理はしない方がいいです」
「うん、ありがとう」
 暖野はその言葉に甘えることにした。
 マルカが漕ぎ始める。
「今夜の寝場所を探さないといけないですからね」
「ええ。でも、マルカこそ無理はしないでね。ゆっくりでいいから」
「心配いりませんよ。私の手は、こう見えても丈夫なんです」
 丘を緩い勾配で越え、先に進む。見える景色は相変わらずだが、陽はかなり傾いていた。
 暖野は前に座り、マルカが後ろで漕いでいる。二人で前方を見ているので、もう先ほどのような危険はないだろう。
 これでもまだ、幸運な方なのだろうか――
 暖野は思う。
 歩きだけでここまで来るのには、もっと時間がかかったはずだった。下手をすれば丸二日を要したかも知れない。
 先には緩い丘陵地帯が続き、線路はどこまでも真っ直ぐに続いている。湖からは少し離れた高台を走っているため、輝く湖面が見える。
「ねえ、マルカ」
 暖野は前を向いたまま言った。「きれいね」
「ええ」
 草原が西陽に照らされて黄金色の波のようだった。