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泉絵師 遙夏
泉絵師 遙夏
novelistID. 42743
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久遠の時空(とき)をかさねて ~Quonฯ Eterno~上

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 道はすぐに見つかった。広場から川上方向へ伸びる道は、電車の車庫のすぐ脇にあった。
 街は広場を囲む建物の裏手で終わっていた。石畳も同じくして終わり、その先は舗装されていない道がほぼ真っ直ぐに続いているだけだった。
 橋までは目測で2キロ前後だろう。道沿いには所々に木立が影を落としている。沿道は畑でもなく、湖畔にあったようなただの草原だった。
 いざ出発してはみたものの、暖野は憂鬱な気分だった。そのせいで、口数も減ってしまっていた。
 靴は幾分歩き易そうなものを入手できたため、歩くこと自体は苦にならなくなっていた。
 前方に盛り土が見えてくる。おそらく線路なのだろう。道はそれを乗り越えているようだ。
 線路へと登る少し手前で、右への道が分かれていた。暖野は線路の方へ向かってみた。
 遮断機も警報器もない踏切だった。単線の線路が伸びている。道の方は、そのまま真っ直ぐに遠い山並みに向かっていた。
 それ以外何もない。振り返ると沙里葉の街並みが見える。それだけだ。線路は河に向かってわずかに登っており、その先が橋なのだろう。
 銀色に輝く線路に耳を当ててみる。何の音も伝わってこない。
 分岐点に戻ると、二人はまた歩き出した。道は平坦に続き、やがて階段になって線路の高さまで登り詰めていた。人は通れるが車は無理だと言っていた理由が、これなのだろう。
 そこはもう、橋のたもとだった。青い水面が見えている。
 橋は一応線路部分と歩道部分に仕切られていて、両者の間には仕切りが設けられていた。
 やや強めの風が吹いている。
 この橋を渡ると、もう沙里葉へは戻れないかも知れない、と暖野は思った。