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亨利(ヘンリー)
亨利(ヘンリー)
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おしゃべりさんのひとり言【全集1】

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【番外編】おしゃべりさんのひとり泣き ピッパの法則



 今、私はウチヒシガレています。

 今回は少し湿っぽい話になります。お許しください。今はなかなかポジティブになれず、この番外編を書き上げる事を以って、気持ちに整理を付けたいと思います。

 先日、私を長年サポートしてくれた、“あの方”が亡くなられました。

 あの方には、ビジネスの基本から、成功者の考え方、セレブ達との付き合い、空港のラウンジ、ドイツ車の良さ、ヘリの操縦、ヨットクラブ、徹夜のトランプ。いろいろと教えていただきました。
 まだ未熟だった私を個人秘書に抜擢していただいたり、背格好が似ていたので、よく高級ブランドのおさがりをもらいました。私の趣味だったイラストは毎月一回、20年以上も買い続けてくださいました。結婚式では仲人を務めてくださり、18歳も年が離れているのに、まさに親友のようにお付き合いいただきました。
 その付き合いは28年に及び、私は人生の半分以上、あの方の影響を受け続けたのです。本当に良くしていただいて、心から感謝の気持ちは尽きません。

     **********

 私にとってあの方との出会いは、奇跡というべきものです。私の投稿小説の中にも度々登場していますが、決して大袈裟に表現していません。まったくその通りの人物です。恐らくは、誰に話しても驚かれるであろう人物の弟さんです。あの方の素性を他人に話したことはほとんどありませんが、それは著名人との付き合いが多い中、彼らの行動は秘密にされることも多く、それに配慮していたからです。
 例えば、22年ほども前、あの方のお兄様の本業で、ある有名アーティストの世話をされていたのですが、その子が通う高校を絶対に知られないように、そこの教職員はもとより、全校生徒や父兄にまで秘密保持を約束させていたことを、誰に話して信じてもらえるでしょうか。恐らくこれを読んでも、私の空想かホラ話だと思われることでしょう。その子は高校時代に大ヒットを連発した、誰の記憶にもある女性ボーカリストです。
 系列の大学進学と同時に、彼女の送迎に使っていたベンツが不要になり、たまたま当時、私が初めて買った中古ベンツと同型だったので、まだ経済力が乏しかった20代の頃の私は、この車からパーツ取りさせてもらったりしました。また彼女が某レストランチェーンのフリーペーパーに連載していたエッセイ的なマンガの修正を、私がさせてもらったことがあるのも思い出です。
 今回お通夜の席で20年ぶりに彼女の顔を見ました。また、その他多くの有名人からのお花が届いており、こっそり写真も撮って来ました。(もちろんSNSになどアップできませんが)
 あの方は、私以外にも多くの若者に語り続けてこられました。そしてその若者からまた新しい若者を紹介され、次々に才能豊かな人材を発掘されるのです。私は2年間秘書を務め、後進にポジションを譲りましたが、後輩たちも皆、様々な業界で面白い地位に就いて成功しています。そんなOB達とも久しぶりに顔を合わせることが出来ました。
 そこで私たちはあの方を偲びながら、昔話に花が咲いたのですが、皆共通して、あの方から学んだ教えを、大切に心に携えて生きているのです。


 あの方に初めてお会いした時、私はまだ24歳でした。
 かつての私は、大学時代を自由気ままに過ごし、就職活動も売り手市場のおかげで問題なく済ませ、結局、その後の進路は銀行員への道を選びました。しかしその選択は、社会人になってわずか三ヶ月足らずで、間違いだったのではと感じてきたのです。
 がんばっても、一年ぐらいではあの先輩のように罵倒されるだけで、五年の我慢であの主任のようになっても、サービス残業で帰宅出来ないでいるでしょう。十五年先のあの係長は、支店長代理に昇格しても愚痴ばっかり。これからの二十年間、何のミスもなく、同期やノロマの先輩たちを蹴落して、なんとか支店長になれたとしても、あのハ○オヤジか・・・と思うと全く魅力がなくなってしまいました。
 どこの会社でも同じだったでしょうか? 慣れるまでの我慢だと思って、問題から目を逸らそうとしていたと思います。しかし、ウチヒシガレルほどではありませんでした。チャンスを見つけて、何かを変えたいという気力があったからです。

 そんな折に、一本の電話がかかってきました。それは、学生時代に一緒にアルバイトをしていた年下の知人からでした。
 電話の声は、うるさいほどにハイテンションでした。彼には、私は貿易会社に就職するか、証券マンになると言っていましたので、銀行員になっていたことを、とても大げさに驚いていました。
「久し振りに会わないか?」と誘われ、気力が失せる毎日であった私は、断ろうと思いましたが、相談したいことがあると言われて、なんとなく出向くことにしました。

 彼とは国道沿いの喫茶店で待ち合わせをしました。そこへ来た彼は、目をキラキラ輝かせていて、どうやら悩み相談という雰囲気ではありませんでした。それもそのはず、彼の相談というのは、新しい仕事を手伝ってほしいというものでした。

 素人の若年者から新規事業の相談なんて・・・どうせ、ねずみ講か何かだろう。

 私はすぐに、いい話と言う彼の誘いを拒否する体制に入りました。(そもそもビジネスなのか?)とも思いました。なぜなら、彼はアルバイト当時、盗んだバイクを改造して乗っていた輩だったので、そんなやつが言ういい話は、ヤバイ話に決まっていると思っていたからです。

 一応彼の話は聞きました。あくまでお愛想程度にです。彼は一所懸命に説明しました。しかし彼が説明するビジネスには、具体案がなく、大まかにスゴイことを皆でやろうという感じにしか聞こえませんでした。
 その時、私にとって幸運だったと思うのは、彼がその話を聞いてまだ間もない頃だったということでした。彼はまだ満足に説明ができませんでしたので、どこかで必死に書き取ったであろうノートを読みながら説明していました。何をしてるスゴイ誰がいて、どんな数字が何倍だとか、その何%だとか・・・。しかし、私はその話しぶりがとてももどかしかったので、半分も聞いていなかったでしょう。それでも彼の説明は続き、コーヒーもとうに飲み干してしまいました。
 いったい何時までかかるのかも分からなかったので、私はスピードアップのために、ついに彼のノートを取り上げ、自分で読むことにしました。
 そのおかげで、あの殴り書きのノートから、あらかたの内容を理解することが出来たのです。
 すべて読み終えた時、私はあまりのユニークさに驚き、彼を見て、「コレってすごい話だ。こんなことが出来るのか?」と言うと、彼はニヤッと笑って頷いたのでした。

 それは単純に、どこかからうまい話を持ってきたのではなく、世の中で大成功している人達がいろんな業界から集まって来て集団を作り、本業とは別に、実験的な新規ビジネスを展開するのに相応しい若者を発掘している。それに参加するチャンスだという内容でした。