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新 黒船来航

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文部科学大臣「私は、この国の教育、科学技術・学術、スポーツ、文化の4つの分野の振興という役割を担う機関の代表をしております。そして本日は、ユネスコの世界記憶遺産登録に向け、プレゼンテーションの一環として、このようなセレモニーを行っていたのですが、そこへ突然の黒船来航とは、あまりの絶妙なタイミングに、これはまるでこの情報をいち早くつかんだ利に聡いハリウッド関係者辺りからの憎らしいほどの演出かと内心思ったのですが、それがじつは、まさかの異星人の方々とのファーストコンタクトとは、・・・とても驚きを隠せません」異星人「我々も出会いをどのような形にすべきか迷ったのですが、・・・いきなり恒星間飛行船で乗り付けようとしても、まず異星人達からの侵略かと受け取られかねず、思案していたところ、実によいタイミングでこのようなイベント情報を掴んだのです。
また地球人の、特にこの国の方々はこのようなソフトランディングを、素直に受け入れてくださる受容性と、寛容さをお持ちだと思っていました。そして、この国では古来よりデリケートな交渉事の際の、腹を割って話せばわかる、との格言を私は存じておりましたので」文部科学大臣「いや、これは、・・・本音でじっくり話合えば相互理解が可能であるという純日本的な故事を御存じだとは、改めて感服いたしました」文部科学大臣「しかし私の頭の中は、今、猛烈なあらしが吹き荒れ混乱を来たしているのですが、・・・あなた方のメッセージを一応100歩譲って、いや、この表現ももちろん御存じの事とは思いますが、・・・100歩譲って当方が受け入れ、天の河銀河の連邦遺産として正式に登録されたと致しましたら、我々にはいったいどのようなメリットがあるのでしょうか、また、どういったリスクも発生するのか、腹積もりをお聞かせ願いたいものです」銀河連邦遺産登録代表「はっきり申しまして、リスクは全く存在しません、と言うか、あるとすればそれはつまり、我々の遥かに進んだテクノロジーとの遭遇に、カルチャーショックと言うか、衝撃と言うのか、はたまたこれまで積み上げて来た技術の未熟さに愕然とされるのではないでしょか」銀河連邦遺産登録調整官「狼煙を上げ、稚拙なコンタクトを取り合っていた頃の時代から、一気にスリップし、スマートフォン時代がやって来たと言う所でしょうか、まあ衝撃を受けるというファクターも、裏を返せばある程度の文明のモデルまたは、無垢な薫りをお持ちなのかなと」この一言にはさすがの文部科学大臣も、それまでの湧き上がる高揚感から、おもてなしの心が引き潮のように、威勢が衰えていくのを肌で感じたのであった。
その僅かな変化を感じとった銀河連邦遺産登録代表は「これ、地球の方々に対して失礼な物言いをするものではない、我々も数万年前までは、このような文明を築いていたではないか」と、叱りつけたのであったが、追い打ちをかけるような更なるコメントに、両の頬を打ちのめされながらも、ここは唯一、平和的な外交以外選択肢はないとの決意で、折れかけた心を奮い立たせたのであった。文部科学大臣「いやー、これは手厳しいお言葉です、狼煙とか、またすべての国で未だにスマートフォン端末に、狂乱していることを実によくリサーチしていらっしゃるものだ。
それに我々には遥かに及ばぬ、夢のテクノロジーである光速での恒星間飛行を重ねて来られたと、・・・ただただその事実だけでも実に驚きを隠せません。我々は未だに太陽系内の各惑星で、各国の無人探査機を何の成果もないまま、国威発揚のためだけに無意味に競わせていると言うのに、お恥ずかしい限りです」文部科学大臣「リスクの方は、圧倒的なテクノロジーを目の前にしても、怯まずに素直に受け入れるメンタリティの向上を全地球的に図ると言う事で納得いたしましたが、我々にとっての最重要なファンダメンタルなメリットとは、どのようなものなのでしょうか、これを見極めない限りは全地球的な場でのディスカッションも含めて、それこそ議題にも上がらないかと思うのですが」銀河連邦遺産登録主席代表「そこが一番肝いりな所で、あ、これは失礼、実は私もこの国の長い歴史の経緯や情緒的なおもてなしの文化を含めて、長くリサーチしていた積弊と申しましょうか、日本人的マインドが体に染み付いてしまっていたようで、申し訳ありません」それを聞いた文部科学大臣は、心の中でまさに合いの手を打つようにして身を乗り出し、文部科学大臣「そこまで深く日本文化に造詣をお持ちだとは、御慧眼の至りに存じます」銀河連邦遺産登録主席代表「これは、社交辞令でもなんでもなく、この国のおもてなしの心は、遥か遠く天の川銀河連邦内にも鳴り響いていますよ。ファーストコンタクトとして選ばれたのも、まさにその一点でした」このコメントに気をよくした大臣は、前述のメリットについての質問を勇躍浴びせたのであった。銀河連邦遺産登録主席代表「順を追ってお話しいたしましょう。
これは地球内での世界遺産登録後でも同じ事象が起こる事かと思いますが、まず、銀河的スケールでの観光客が殺到すると言う事がまず考えられます。しかも天の川銀河連邦内すべての高度な文明圏からのお客様達です。銀河連邦内ではすべての領域をカバーするGPS衛星が存在し、そこからの情報を頼りにナビを搭載した宇宙船が、空間に無数に空いたワームホールを通り光速でやって来るという、つまり簡明に分かりやすく言えば、観光目的のお客様がふえますよ、商売が繁盛しますよ、と言う事なのです。しかし、さまざまな形態をされた方々なので、受け入れ側は、一時戸惑われる事かと存じますが、そこは皆様、高度な知性と教養をお持ちの方々ばかりです。決して、トラブルやひんしゅくを買うことはまずありえません」銀河連邦遺産登録調整官「その受け入れ態勢の為、恒星間飛行船対応の高度化された空港整備、様々な惑星の方々に対応した快適なリゾート宿泊施設、また旅の楽しみの一つでもあるグルメのメニュープランニング、どれ一つをとっても手落ちの無い様にして頂きたいのです。それと、これはぜひ必ず実現して頂きたいのですが、この地球上に満ち溢れている攻撃的兵器のすべてを自らの手で事前に廃棄する事をお約束して頂きたい。その後、私を含めたサポートチームを新たに派遣いたしますので、そのチームのアドバイスに従って、受け入れ態勢を万全なものにして頂きます」官僚「事前準備に関しては、おおよそのアウトラインは掴めましたが、その滞在費などの決済と申しましょうか、支払いはどのようなかたちでなされるのでしょうか」銀河連邦遺産登録調整官「それにつきましては、スタンダードな方法としては、銀河連邦仮想通貨による一括支払い、またはリボ払いなど、またその惑星の産物・資源による決済方法です。
作品名:新 黒船来航 作家名:森 明彦