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新 黒船来航

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これはここでは希少金属の部類に入るゴールドやプラチナに覆われた地殻を持つ惑星や、ほぼ炭素元素一色に覆われた惑星系などは、地表に小惑星ほどのダイヤモンド原石がそれこそ無尽蔵に露出しています、それらを銀河連邦マーケット市場での交換レートに従った決済方法、そして地球上では全く存在しない元素や鉱物資源類、他にはその対価に準ずる超テクノロジーの技術移転などと、国や関係機関、ショップサイドの希望に沿った決済方法を選択できます。それにクライアント様の期待値が高い国や領域ほど、お客様が殺到されるかとも思いますので、それぞれの国が工夫を凝らしたおもてなしを期待いたします」銀河連邦遺産登録主席代表「一応これで我々の使命はある程度理解されたものと思います。あとは地球上で柔軟にディスカッションして頂き、十分に審理を尽くして貰いたいものです。
やがて全地球惑星系としての意志統一が図られましたら、再び調整官とサポートチームが改めて参りますので、輝かしい地球の未来を掴みとって頂きたいと心から願ってやみません」やがてホログラフィックディスプレイに登場していた二人の異星人達は、その言葉を残して消え去り、またメイン埠頭に横付けされていた黒船は、驚くばかりの巨大な宇宙船へと変貌を遂げ、人々の感嘆交じりの悲鳴をよそに、瞬く間に光速で地球の大気圏を脱出したのであった。官僚「長い夢から覚めたような心持ですね、大臣」文部科学大臣「・・・今のは、夢か ! 」 官僚「いや夢ではないと思います、その証拠に大臣のスマートフォンには、世界中のあらゆる主要閣僚から、この件についての詳細を詳しく知りたいという大量のメッセージが届いるではありませんか。これは我が国がイニシアチブをとり世界をリードしていく絶好の機会かと心得ますが」文部科学大臣「我が国をファーストコンタクトに選んでくれて感謝すべきだな、なにしろおもてなしの心が、遥か遠く天の川銀河にまで届いていようとはな、・・・好事門を出でず悪事千里を行くのとは真逆の展開ではないか、さっそく国連緊急常任理事会を開催するよう各国の首脳や、関係機関に打診してくれ、頼むぞ」官僚「承知しました」文部科学大臣「しかし、銀河連邦遺産登録調整官がまた来るとか言っていたな、私にはなんとなく苦手なタイプだな、何か物言いが冷徹な官僚そのもので、そして話の端にちくりとした棘のようなものを感じる」官僚「大臣、私も一応官僚の端くれですが」文部科学大臣「いや、君は上司には媚びず、部下には思いやりがある。
典型的な官僚とは一線を画した素晴らしい人物だと私は思っているよ」官僚「有難うございます、励みになります」
・・・そしてこの時期地球においては、僅か人口数万人ほどの小国でさえ、核兵器を常備するような状態に陥っており、まさに危うい薄氷を踏むような見せかけの平和を辛うじて維持していたのだが、年々倍増する防衛費負担に耐え切れぬ問題を抱えた小国などがいつ暴発するかと、いつも国連内では秘かにその議題が取り上げられていたのだが、異星人からのファーストコンタクトはまさに神の啓示、無意味な軍拡競争を収束させ、社会基盤を360°転換させて貴重な地球資源を、異星人に対する観光産業誘致に振り向けようという機運が盛り上がり、加盟各国が先を争って核兵器廃絶に向かって行動を起こし始めたのであった。
その頃、ワームホールを光速で移動中の宇宙船内では、銀河連邦遺産登録主席代表「これでまた一つ貴重な惑星が、破滅の淵から救われたようだな」銀河連邦遺産登録調整官「確かに今回のケースは、完璧の内容でした」銀河連邦遺産登録主席代表「ああ、彼らの歴史観に相乗りするような形でうまく事が運んだものだ。
私の前任者が、歴史遺産登録の手続きを僅かに躊躇したために、太陽系第四惑星は儚く滅亡してしまったのだから、何としても地球だけは救わねばとの思いが強くあってね」銀河連邦遺産登録調整官「ああ、それは火星の件でしたね、今の地球と似たような環境をもち、ある程度の文明を築いていたと聞き及んでいます。しかし核戦争が起こり、水はすべて蒸発、大気は残らず吹き飛び剥がされ、放射能に汚染された荒れ果てた無機質の大地だけが残ったと」銀河連邦遺産登録主席代表「・・・あれは、救えるものをぎりぎりの淵で救えなかった痛恨の念と言うか、申し訳ない気持ちでいっぱいだった。しかし地球は自らの自転軸を正しく修正し直し、輝かしい未来へと舵をきり発展して行く事だろう。多くの観光客が訪れるようになれば、それこそ肌の色合いや同じ種の中での、何のいわれもない差別などは、徐々に薄らいでいくだろうし、何せ肌の色合いの違いだけでも、この銀河連邦内には何十万種もあるのだから、それに各神話を源流とした宗教同士の対立も、いずれは宇宙の起源や真理を知る機会が訪れれば、発展的に解消していく事だろう。
何せ宇宙はとるに足らぬ物理的現象の揺らぎによって一瞬で誕生し、僅かな化学反応によって生命が誕生した、それが宇宙に充満する放射線を浴びて突然変異的に進化し、今日の我々を形作ったと言うすこぶる自然な成り行きなのだから」

作品名:新 黒船来航 作家名:森 明彦