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秘密結社ドゲッサー編第一話「オレたちが仲間になったわけ」

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「それは、ちょっと、市場に出回るとなると、かなりの値が付くな。人によっては天井知らずの値が付くだろう。今の時代の魔法使いでは若返りの薬は欠陥品しか作れないからな。やはりドラゴン族となると、こういう薬も作れるのか。五十男の俺には、かなり魅力的な一品だ。スカイ達、交換してくれないか」
スカイは言った。
「そんなに重要な物かよ」
 シュドは情けなく見えるほど真面目な顔で言った。
 「まだ15のスカイには判らんよ。歳取ってから欲しくなる物だ」
ミレルは言った。
 「この若返りの薬3回分はシュドさん達の報酬の宝箱にも含まれています」
 シュドが、サーチーとサブミナに言った。
 「そうか、俺の報酬の取り分に、この薬の使用権をいれてくれ」
 サーチーが達観した顔で頷いて言った。
 「別に構いませんよ。私は興味は在りません。人間は、いずれ年老いて死んでいくモノです。その流れは不可逆な変化ですよ」
 サブミナが腕を組んで恥ずかしそうな顔で俯いて言った。
 「私も使うかもしれない。三十過ぎると格闘家は身体がキッツイから」
確かにスカイも高い物だとは思って若返りの薬を見ていた。だがまだ十代のスカイには大して魅力的な宝物には思えなかった。
 スカイは言った。
「それじゃあ、次は何なんだい」
ミレルは言った。
「次にご紹介するのは、超コンパクトで強力な法丸石です。普通の魔法を使う際に補助で使う練法石の約五百倍の密度を、正確には四百九十八倍の容積比で持っている言語道断の珍しい宝玉です。シュドさん達の宝箱にも五百十八倍の同等品が入っています」
ミレルが小箱を開けた。中には宝玉が入っていた。
 シュドは言った。
 「ほう、それは、魔法使いには魅力的だなサーチー」
 サーチーは頷きながら言った。
「私は、あまり魔法が好きじゃないので、興味は在りませんね。モンスターの生態調査の為に魔法使いをやっているんです。今の時代は、魔法使いに、ならないと学者には、なれませんからね」
シュドは言った。
 「それなら、心おきなく売却できるな」
 サーチーは頷いて言った。
 「ええ、全然構いませんよ」
スカイも、どのくらいの金額になるか考えていた。
前に進みなさい。
 何かの幻聴がスカイの耳に聞こえてきた。
 凛とした女の声だった。
 この声には聞き覚えが在った。
 今から五年前の時だ……
 スカイは言った。
 「身体が勝手に動くぞ。何か、変な女の声がする」
 スカイはフラフラしながらドラゴンの財宝の山の方へと向かって行った。
 確かに変だが首から先が動いているのだ。もっと正確に言うと頭に巻いたバンダナの中に入っている鉢金が身体を引っ張っていったようだった。スカイはバンダナを振り解いた。そしてバンダナの中に入れて鉢金に使っているレリーフを取りだした。
前に進みなさい。
 また女の声が聞こえてきた。
これはスカイが十歳の頃、地下に作られた遺跡で財宝を探していた時に聞いた声に似ていた。あの時、スカイは落盤でパーティから外れて、一人真っ暗な地底の鍾乳洞を歩いていたのだ。そしてスカイは、その奥の巨大な地下都市の遺跡に在った、このレリーフを手に入れた。その時にも、この女の声がしたのだ。
 前に進みなさい。
 シュドがスカイを怪訝な顔で見ながら言った。
 「おい、スカイどうした。金貨に目がくらんだのか。確かに金貨には価値があるが、今、貰っている財宝の方が値段が高いぞ。後で金貨に換金しろ」
金貨や銀貨が無造作に山のように積み上げられていた。そして、その中には、王冠や錫杖や剣や鎧などが無造作に転がっていた。
スカイは金貨の山をザクザクと音を立てて登って行った。
 ミレルは言った。
「あれは、何かの力が働いていますね」
 マグギャランが腕を組んだまま溜息を付いて言った。
「それはゼニの魔力に違いない。スカイはゼニに弱いからな」
 みんなゾロゾロとスカイの後を付いてきた。
スカイは金貨が雪崩をうって山積みにされて宝石が乱雑に転がっている財宝の山の頂上に来た、いや、正確には金貨の山に突き刺さった一本の剣の前に来た。
その剣は真っ黒な刃を持ち刀身に金色の模様が書かれている両手持ちの長剣だった。
その剣を取りなさい。
 また、女の声が聞こえてきた。
 スカイは剣を両手で握った。そして金貨の山から引っこ抜いた。
 ミレルが懐から望遠鏡を取り出して金貨の山の頂上に居るスカイを見ながら驚いた声で言った。
 「それは呪われた魔剣ですよ。もっと他に良い剣が沢山在るのに、何で、そんな剣を取るのですか…まさか、あなたが持っている、そのレリーフの紋章は古代の…いえ、あなたは、スカイ。そうなのですか」
 マグギャランが言った。
「スカイ、何を、やっているのだ。もっと、ましな物を選べ。カース・ソードを取るなど間抜けにも程が在るぞ」
スカイは持った剣を見ながら、その剣の流麗な刃に、うっとりして言った。
 「いや、これを取れと女の声が聞こえた。何か、この剣は俺の手に、しっくりと、くるんだよな。何て良い剣なんだ」
 サーチーが言った。
「呪われた剣ならば名前が在る場合が、あります。私は専門では在りませんが刀剣考古学という講義で習った記憶が在ります」
シュドは言った。
「それならミレル。この剣には名前が在るのか」
 ミレルが言った。
「それは、「黒炎刻」です」
 スカイも、その剣の事は聞いたことがあった。呪われた有名な魔剣であった。だが、実際に目にしてみると。全然邪悪な気配はしなかったし。その剣は、たまらなく良い剣に見えた。こんな良い剣を見たのは初めてだった。
 スカイは、うっとりして黒炎刻を見て居た。
マグギャランはスカイに大声で叫んだ。
 「おい、スカイ、それは不味いぞ、持ち主を選ぶ有名な魔剣中の魔剣だ」
 マグギャランは続けて言った。
 「コモン国家共通騎士試験で、よく出題される程有名な剣だ。持ってはいけない剣として出題される。幾多の高名な騎士や戦士や剣士が手にしては、いたが持ち主を全員不幸の、どん底に突き落とす事で有名なのだ。確か百五十年ぐらい前から行方が知られずになっていた剣だが、どうやらドラゴンの財宝の中に紛れ込んでいたらしいな、俺が暗記した外見的な特徴とも一致する。悪いことは言わぬ。そんな魔剣など黙って、この宝物庫の中に捨てて置け」
スカイは黒い刀身の剣に頬ずりしながら言った。
「嫌だよ。なんか、この剣が無茶苦茶気に入って居るんだよ。ああ、何て良い剣なんだ」
ミレルが厳しい顔で言った。
 「その剣、「黒炎刻」には、もう1つの名前が在りますが、今は言う必要はないでしょう。あなたは、どうやら、もう1つの名前の方に導かれているのかも知れません。あなたが持つ、レリーフに書かれている古代の紋章が本物なら。それならば、自ずと名前を知る事となりましょう。黒炎刻はあなたに譲りましょう。スカイ・ザ・ワイドハート。鞘は横に転がっていますから、それを使って下さい」
 スカイは黒炎刻を鞘に収めて手に持ちミレル達の所に戻ってきながら言った。