小説が読める!投稿できる!小説家(novelist)の小説投稿コミュニティ!

二次創作小説 https://2.novelist.jp/ | 官能小説 https://r18.novelist.jp/
オンライン小説投稿サイト「novelist.jp(ノベリスト・ジェイピー)」

お見受けします。

INDEX|2ページ/3ページ|

次のページ前のページ
 


 洗面台の鏡の中の自分の姿を、水無月さんは、無言で見詰めます。

 沈黙に耐え切れなくなった様に、<鏡像の水無月さん>が、言葉を発しました。

「小生… ン・ウカショと申します」

 自己紹介と同時に、<鏡像の水無月さん>だったものは 初老の男性の姿に変わります。

「実は小生…貴殿の様な、魔力の持ち主を探しておったのです。」

「…」

「是非とも貴殿の力で、小生をそちらの世界に…召喚して頂きたいのですよ!」

 期待の目で見る ン・ウカショに、水無月さんは 素っ気なく答えました。

「嫌。魂…取られたくない」

 慌てた ン・ウカショは、体を前に乗り出します。

「こちらからお願いして お骨折り頂くのに…そんな筋が通らない事は、致しません!」

 鏡の向こうの顔が近くなったので、怪訝そうに顎を引く水無月さん。

 それに気が付いた ン・ウカショは、慌てて姿勢を正しました。

「実は…貴殿に この様な事をお願いするには、理由があるのです…」

「─」

「魔界では…人界に召喚された回数が多い程、箔が付くのですが…」

 ン・ウカショの声が、弱々しくなります。

「─ 不本意ながら…あまり召喚回数が多くないのですよ、小生は。。。」

 俯いた ン・ウカショに、水無月さんは尋ねました。

「体裁を良くするために…人界に召喚して貰う、営業活動?」

「…恥ずかしながら」

 黙りこんだ ン・ウカショに、水無月さんが切り出します。

「もし、召喚したら、何…して貰えるの?」

 水無月さんの言葉を聞いて、ン・ウカショは顔を上げました。

「ご希望のものを…何なりと!」

 一途の望みを託して、ン・ウカショが畳み掛けます。

「魂を、ご所望ですか?」

「…」

「世界征服でも、不老不死でも、巨万の富でも…お望みを何なりと!!」

 熱弁を振るう ン・ウカショに、水無月さんは、ボソッと言いました。

「…ケーキセット。」

「は…?」

「特選ケーキセット…<カフェ敦賀>の。」

「─ そんなもので…宜しいのですか?」

 頷いた水無月さんに、ン・ウカショは、拍子抜けした声を出します。

「お、お安い御用では…ありますが。。。」

作品名:お見受けします。 作家名:紀之介