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いい湯だね

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暖簾をくぐり、ふたり連れが銭湯にやってきた。
「こっちだよ。靴を脱いだら此処に入れるんだ」
土間で靴を脱いだ男性が世話を焼いているのは、まだ幼稚園かそれ以前かもしれない女の子だ。
「一緒に入れておこうか」
男性の履物の半分ほどしかない靴を 同じ下駄箱に入れて木札の鍵をかけた。
「はちはち」
「はちじゅうはちだよ。覚えておいてね」
女の子は、男性から木札を渡されると大事そうに掴んで、男性の後ろをついていった。
男性は、正面にあるフロントへと向かった。


銭湯といえば、入り口から男湯と女湯が分かれており、番台で仕切られた脱衣所へと入っていくイメージが抜けきらないが、今どきは、ひとつの受付で入浴料を支払い、左右に分かれて男湯と女湯へと分かれて入る。覗くの覗かれたのと騒ぐことも 今となっては 面白味のある情景だったのかもしれない。


「いらっしゃい」
男性は、料金表に目を向けた。
大人…十二歳以上が四百二十円。
中人…六歳以上十二歳未満、小学生にあたる年齢が百五十円。
小人…六歳未満が七〇円。
多少地域で異なる料金だが ほぼ平均的な料金設定だろう。
「大人と子ども」
「四百九十円ね」
ここ最近、この銭湯を利用している男性は、料金表を確かめるまでもなくポケットに用意してあった五百円玉をカウンターのトレイに入れた。
「はい、十円のおつりね」
男性は、受け取った小銭を女の子に渡した。女の子は、その十円を首から下げたチャックの財布に入れた。それは、女の子のお小遣いにでもなるのだろう。
「お父さんとゆっくり入っておいでね」
それが 当然のように父親だろう男性とその女の子は 男湯の暖簾をくぐっていった。


銭湯の男湯と女湯。公衆浴場での入浴者の年齢制限はあるのだろうか?
『おおむね10歳以上の男女を混浴させないこと』が条例的に定められているようだ。
それと比較すれば、温泉場での混浴に年齢制限がないのは、ずいぶん開放的なことだと受け取るべきなのかもしれない。

作品名:いい湯だね 作家名:甜茶