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「色々あるんだよ。病院って」
 ボクとリョウスケの頭を叩いて、ソウイチロウが頷いた。
「大体、ユウタだって……」
 ソウイチロウがそう言った時だった。
「ここって……」
 サトルが辺りを見回す。
 ボクらは丁度、草原を抜けて森へと入ったところ。
「やっぱりそうだ」
 首を傾げるボクらに、サトルが指さす。
「ほら、あの切り株!」
 この世界に入って間もなく、ユウタと喧嘩して、水のドラゴンに襲われて、サトルに出会った。その時に、お互いの事を話した切り株だ。
「スタート地点に戻ったって事か?」
 リョウスケの呟きにユウタが首を横に振った。その首から下がっているクリスタルは煌々と輝き、まっすぐに森の奥を指している。
「最初にいたところがゴールだったって事だな」
 ソウイチロウがメガネを上げた。
 “果て”だからと言って、世界の端っこにあるわけじゃない。その世界が生まれたところもある意味“果て”なんだと、なんだか分かったような分からないような事を言われた。
「で、この先には何があるんだ?」
 聞かれて、ボクら三人は顔を見合わせた。
「『回復の泉』」
「水のドラゴン」
 ユウタとボクの答えに続いて、
「ラストステージ」
 サトルが真剣な面持ちで答え、
「……だろうな……」
 ソウイチロウが頷いた。
 切り株に座って、すぐさま作戦会議が始まった。
「『回復の泉』を無視する道理はないな」
 皮袋の中の水もあと僅かだ。ラストに向けて持っていきたい。
「で、泉の水を汲むのには、ドラゴンが邪魔だ、と……」
 地面には、サトルが泉周辺の見取り図を描いてくれた。泉というよりは湖のような広い水源。水が豊かだから、まわりは草や木が青々と生い茂っている。モンスターがいる事を除けば、写真の中の風景のようだ。
「とりあえず、ドラゴンを泉から引き離さないとな」
 泉で水を汲む。ドラゴンが出てくる。退治する。上手くいったところで、泉の水がなくなってしまっては何にもならない。まずは泉に被害が及ばないように、ドラゴンを引き離す必要があった。
「ユウタとサトル。ふたりが水を汲みに行く。これは囮だから、無理に沢山汲まなくてもいい」
 ふたりが頷く。
「ユウタの話だと、その時点でドラゴンが出てくるはずだ。そうしたら、こっちに逃げろ」
「うん」
「分かった」
作品名:CLOSE GAME 作家名:竹本 緒