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CLOSE GAME

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「そっか! きっと、ママだ!」
 ネットとかで調べて、ボクの知らない新機種を買ってくれてたんだ。それなのに、ボクが別の機種をねだったりしたから怒っちゃったんだな。でもって、ボクがすぐに気付くようにスイッチを入れたままにして帰ったんだ。欲しかったゲーム機とは違うけど、新機種には変わりないもんね。
【PRESS START】
 白い光の中、マリンブルーの文字が点滅している。
「……スタートボタンは……」
 丁度、右手親指の当たる位置にあったボタンを押すと、病室に華々しいオープニング曲が流れた。その音の大きさに慌ててイヤホンを探す。静かな病院の静かな四人部屋。どんなに音をしぼってもムダに響いてしまうから。大勢いればいたで迷惑でしょ、ゲームの音って。だから、入院の時にイヤホンは必需品。
 元々持ってきていたゲーム機のポーチからイヤホンを取り出すと、新しいゲーム機にそれを繋げた。部屋に響いていた音が、耳元へと移動する。
【あなたのなまえは?】
「タ・カ・ヒ・サ」
【性別は?】
「おとこ」
【年齢は?】
「12才」
【誕生日は?】
「七月……」
 ―――― ゲームが始まった。

  
 臨場感のあるBGMと効果音に、ボクは夢中でゲームを進めた。
 ゲームはRPG。武器は背につけた弓矢と腰の短剣だ。始めてしばらくはモンスターも弱いから楽勝で、一人、森の中を歩いていた。
 どれ位プレイしただろう……。目的地もなにも分からないという事に気付いて取説を探した。でも、待って。これは本体にソフトが入った状態でベッドの上に置かれていた。取説どころか、箱すらなかったのだ。
「とりあえず、この森を抜けなきゃダメか……」
 そう思って前へと踏み出した途端、後ろから風が吹いた。窓が開いているのかと思って振りむこうとすると同時に、今度は戦闘の音楽が鳴り響く。
 画面上には初めて見るモンスターの姿。ふわふわの毛でおおわれたそのモンスターはとても強そうには見えなかった。
「またまた楽勝!」
 そう感じて、背中から矢を抜くと、ボクはモンスターめがけて矢を放つ。
“パシュッ!”
 勢いよく飛んだ矢は、真っ直ぐにモンスターを直撃した。一撃でモンスターが消滅する。と同時に、その身体を覆っていた綿毛が辺り一面に舞う。
「……ヒュー……」
 のどの奥でイヤな音が鳴った。
「え?」
作品名:CLOSE GAME 作家名:竹本 緒