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海野ごはん
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’50sブルース 延暦寺の階段、大原の桜

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延暦寺の階段、大原の桜   【美佳子59歳】




最初は遊びのツモリ・・・だった。
別れた男との思い出を消したくて、つい連絡した。
遠距離恋愛だから、年に何回しか合わない。
都合のいい時だけ会える。それだけでよかった。
良かったはずなのに、デートを重ねるたび身体を重ねるたび遊びの彼が本気に思えてきた。
ううん、向こうも遊び。
大人の付き合いだから・・・と、どこか寂しさをごまかしていたのに、ごまかせなくなってきた。

久しぶりの彼とのデートで昔のこと、自分のこと、内緒にしてたことを話した。
途端・・・
とうとう、堰を切ったように彼への愛が溢れだした。

なんにも思わなかった一人の時間が急に淋しくなる。一人でいるのが不安になる。
彼が好きだと自分で自覚した。
だんだん会いたさが募る。
都合が良かった遠距離恋愛が、急に不都合になる。
メールしていい?
声を聞いてもいい?
甘えてる自分がいる
もう 恋なんてと思ってたのに・・・。


琵琶湖湖畔の大津から京都へ向かう県道30号線の峠道は、雨が降り出しそうな雲を山頂に抱え、わりと混んでいた。霊園を過ぎるとまもなく右に比叡山ドライブウェイの入口が見え、達郎はハンドルをそちらに切った。
ゲートをくぐると先ほどの車の列が無くなり、目の前は白い霧で覆われた新緑の枝が道路をまたぐように覆いかぶさっている。深い緑の世界が広がっていた。
「雨が降りそうだね」美佳子は自分の車を運転する達郎の横顔を見た。
達郎は飛行機に乗り、美佳子のいる町へ来るとそのまま彼女の車を運転して、ここまで走ってきたのだ。
達郎が比叡山延暦寺へ行こうと言い出したのは、今走っているドライブウエィから見える琵琶湖の対岸には自分が幼い時生まれ育った町が見えると美佳子がメールで教えたからだ。
この比叡山から琵琶湖越しに見える自分の町が好きだと美佳子から知った達郎は、同じ景色を見たくてやってきた。

高度を上げていく度、バックミラー越しに大津の街並みが見える。そして小さくなっていく。
延暦寺手前の展望台からは、厚い雲の切れ間に琵琶湖の湖面が銀色に輝いていて見えた。
「どっち?」達郎は美佳子に聞いた。
「あっち。でも今日は雲で見えないみたい」そう言った途端、風が強くなり雨が降り出してきた。
「やばぁ、先に行こうぜ」達郎は言った。この雲の厚さだとしばらく待っても、雲の切れ目が現れそうになく美佳子の生まれた町が見えそうでなかったからだ。