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完全ヒーロー主義の八番目。

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第二話 贈り物の意味


遙兄さんは言葉通り荒戯兄さんを連れて一階まで下りてきた。何故か遙兄さんは不機嫌なのか困っているのか分からないように目を細めて俯いていたけれど。
しかも遙兄さんが着ていたパーカーを荒戯兄さんが着ていた事にも驚いたが、彰斗さんが言い咎めなかったことにも驚いた。
…本当は『部屋には入ってはいけない事』を私が言わなかったからそうなったのだろうが。

本当に最近のことで、荒戯兄さんは恐らく扉に凭れながらに扉越しで言った。

「………みんなの顔、見たいなぁ〜…」

「え?」と、突然の無茶な願いに私もその場に居た響兄さんも驚いていた。彼にしては弱々しく、声も震えていたからとても吃驚した。
荒戯兄さんは、誰かと会話をしたかったのだ。一人ぼっちというのは誰でも寂しく感じるもので、荒戯兄さんのように天真爛漫な人格の人でも例外なんかではない。声だけでは心細く、泣きたくなったに違いない。

「…急にどうしたんだよ荒戯」
「ん〜…。……何となく!」
「……」
「………?」


****


「えへへ〜」
「彩乃姉さんもご機嫌だね…?」
「そうかな?そんな事無いと…」
「マフラーごときで単純なだけだって」

彩乃姉さんは誤魔化そうとしていたようだが、残念なことにお兄ちゃんが理由を簡単に説明してしまう。知られたことが恥ずかしかったのか顔全体を真っ赤にして照れ隠しにお兄ちゃんに怒っていた。「隠したって意味無いだろ」等と反論を少なくともしていたが、彩乃姉さんは聞く耳も持たなかった。それどころか他の兄妹の所へ言ってしまった。
彩乃姉さんが他の兄妹たちの所へ言ってから少ししてお兄ちゃんは口を開く。

「…遙が彩乃のためにさ、というか俺たちにパーカーを買ってきてくれただろ?」
「うん。確か遊哉兄さんと一緒に選んだって言ってたよね?」

遙兄さんが教えてくれた事実を確認するように聞き返すと、お兄ちゃんは黙って頷いた。座る体勢を変えようと胡坐を掻くと、続けるように話す。

「…。だからパーカーになったんだろうけどな、あんまり無理はしない方が良いと思うんだけどな」
「…遙兄さんにその事、言わないの?」
「……俺が言ったって、彼奴が聞く訳無いだろ?」

…そうは思わないけど、とは思ったものの、お兄ちゃんも頑固なので分かってくれないだろうから言ったりはしなかった。昔と比べると口数が多くなったお兄ちゃんは、相変わらず仏頂面で天井を仰いでいる。
この家に来て間もなかった頃は私ともそうだったが、彼は当時はあまり他の兄妹たちとも話さなかったので悪く言えば遊哉兄さんよりも無口だった。

「…それはそうと、お前は橙色なんだな…」
「うん…。でも、なんで橙色なんだろ…」

不思議に思って口に出してみると、お兄ちゃんは少し考えてから話してくれた。

「…橙色は、沖縄県のイメージカラーでもあるんだ。橙色は【活発】とか…、温かいコミュニケーションを意味してるんだ。……ある意味でお前にぴったりかもな」
「?」

言っている意味がよく分からなかったので、首を傾げた。「気にするな」とでも言うようにお兄ちゃんは手を横に振った。


******


「…なるほど、確かにその意味が込められてる気がするね……」

杏から聞いた話をそのまま暇潰しに話すと、ぼんやりとした様子で遊哉は呟いた。杏から聞いた時も俺は分からなかったが、遊哉には分かったらしい。

「……どういう事?」
「…杏の性格とか、周りへの影響とかを…考えて買ったんだと思うよ。…真剣に選んでたみたいだったし…」

じゃあ他の兄妹に渡したパーカーの色にも意味が有るのだろうか。ふとそんな事が気になって、何かを知っているらしい遊哉に聞いてみることにした。

「…じゃあ、他の兄妹のパーカーの色の意味って何なの?」
「…。響のパーカーは水色…、水色の意味は【変革】…男性性を意味するんだよ。他には自由の色としても言われてるし…」

口数の少ない彼にしては珍しく詳しく話してくれた。俺の質問に答えるべく遊哉は続けて流暢に話し始めた。

「兄さんの赤…【主張】と【強調】の二つの意味が有って…、強いエネルギーを意味するんだ。橙色は黄系色だけど…赤寄りの色なんだよ。だから赤も温かさを連想させる色となってる…。次に…彩乃の白は【純粋さ】…、強い意志を意味してる」