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カクテルの紡ぐ恋歌(うた)Ⅲ

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「あれ、みなさん、観察が甘いですねえ。彼女、いつもブレスレットみたいな時計してたでしょ。それが、今日は、ない」
「だから?」
 片桐が「シマ」全員の疑問を代弁した。宮崎は、銀縁眼鏡を光らせて、ドラマの探偵役よろしく得意げに顎を撫でながら、自分の推理を披露した。
「あの時計、彼氏からのプレゼントだったんだとみるね。それが、昨日の夜に別れ話になったんで、今日は外してきた。昨日、彼女は珍しく定時帰りだったんでしょ。それなら、仕事帰りに彼氏と会っていたっておかしくない。ま、会わないで電話だけだったって可能性もありますけど。会うか話すかして、別れ話になった可能性が大かな、と……」
 片桐はがぜん目を輝かせた。他人の浮いた話には目がないらしい。一方、先任の松永は渋い顔で腕を組み、天井を見上げた。仕事の面倒を見てやっているとはいえ、女性職員のプライベートな問題には、さすがに安易には立ち入れない。
「じゃあ近々、あいつの愚痴を聞く会でも開くか。暗い酒になりそうだが」
 比留川がふざけてしかめっ面をすると、松永を除く四人のメンバーは無遠慮な笑い声を上げた。悪ノリが過ぎる「直轄ジマ」の手綱を締めるのは、いつもはチーム最年長の高峰3等陸佐の役どころだったが、彼は前日に引き続き、今日も欠勤だった。