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海の向こうから

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八 ナジエージタ号



  貝浜(かいのはま)、日本海に面する小さな岬のある町だ。町の名前は知っていたが、この町を車で通り抜けたことは何度かあるが立ち寄ったことは一度もない。町は東西に長く海岸線沿いに並走する国道と単線の鉄道があるだけで閑散としている。静かに過ごすにはいいところだと思うけど、私個人の意見で言えば、もうちょっと遊ぶところが欲しいかなと思うのは贅沢なんだろうか。

 この町の中心がどこか分からないので、私たちはまず人が集まりそうな場所を考えて真っ先に思い付いたのが電車の駅だった。それに町のランドマークになるようなものはおじいちゃんも知らないようなので、町に一つしかない駅に立ち寄って情報収集することにした。
「とにかくココなら何か分かるじゃろう」
 おじいちゃんはそういうけれど、駅も閑散としていてあまり利用されている感じがしない。だけど、待合室には暖炉があってレトロな雰囲気がちょっといい。先生は時刻表を見て頷いている、一時間に一本しか電車が来ないしホームもとても短いので電車の長さが想像できると説明した。確かにここの電車を利用するひとは少ないようだ。

「すみませーん……」
 先生は事務室で作業をしている若い駅員に声をかけた。

「この辺で、ロシアに関係するものって、ないですか?」
曖昧な質問を嫌な顔一つせずに聞いてくれる駅員さん、名札を見れば「大石」と書いてある。大石さんは
「ああ、あれじゃないかな」と考えたあと手をパチンと叩く音が待合室に響いた「それでしたら、この道を行って岬に出ますと展望台があります。そこへ行ってみれば……」
 親切な駅員さんに教えてもらい、私たちは岬の方へと向かうことにした。

作品名:海の向こうから 作家名:八馬八朔