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海の向こうから

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七 でこぼこ調査隊、ふたたび



 三ヶ月振りに再結成された「でこぼこ調査隊プルースアディン」はおじいちゃんが運転する軽自動車で貝浜を目指すことになった。この問題となったレコードを見つけた海岸からさらに20分のところに岬がある。といっても分かっているのは貝浜というキリル文字で書かれた音だけで、目的地が正解かは分からない。でも、場所を考えるとここには何かヒントがあると信じていた――。

「先生、何であれがキリル文字だって分かったの?」
 私は後部座席から身を乗り出して、助手席にいる先生に質問をした。
「大分前のことだけど、教えに行った時のこと思い出してよ」
「えーっ、何だったっけ?」
 先生が出した話題は、夏の暑い時、先生がうちに勉強を教えに来た時「暑いから涼しくなる話がなーい?」と私がワガママ言った時の話だった。

  * * *

「じゃあ、簡単なクイズを出そう」
「うんうん」
 先生の雑談が好きだ。大学生の頭から出る話題だけにただの雑談だけじゃなくて、ちゃんと考えさせてくれる話題が多い。それでいて学校でこのネタを使うと大概はウケるし、ちょっとだけ知的に思われる自分が好きだ。
「ロシアでは、お店で買ってきた食べ物が置いとくと凍ってしまって大変なんだそうだ。さて、凍らないように保存しておくにはどうすればいいだろう?」

   * * *

「ああ、その話。覚えてるよ」
横にいるイリーナさんがクスクス笑っている
「それ、ワタシが松下さんに出したクイズです」
「なんだ、先生もパクりじゃんか」
 先生は笑ってごまかしている。でも先生のことだから、この問題がツボにはまったのだろう。
「イリーナさん、これ本当のクイズ?」
「そうです、『なぞなぞ』ではありません」
 初めて聞いたおじいちゃんは答えがわかったようで含み笑いをしながらハンドルを握り前を向いている。
「正解は『冷蔵庫にいれる』だったよね」
「そうそう」先生は前を向いて笑っている「でも麻衣子さんはあの時答えられなかったよね」
「げげっ――」
 そこは覚えてて欲しくなかったな。でも本当のことだから私も笑い返した。
「でもさ先生。当たり前な答なのに私は何であの時答えられなかったんだろう?」
「いい質問だね」先生は私の方を向いた「それはね、僕の前フリが余計な情報だからだよ。前フリで当たり前の答えを封じられたんだ」
「暑くても寒くても冷蔵庫に入れるのは同じデス」
「それもそうだ――、って何でそれとキリル文字が関係あるの?」
 前フリが答えを隠したのはわかったけど、話の真意がまだわからない。
「だからね、最初は僕も麻衣子さんもあれを『ローマ字』って思ったでしょ?そこが間違いだったんだよ」
「先生は、アルファベットはローマ字とは限らんと言いたかったんじゃな?」
今度はおじいちゃんが付け足した。
「そうです、先入観ってこわいですね」
「外国人はみんな英語を話すとは限りません」イリーナさんが話を続けた「日本ではワタシを見たら英語で話しかけてきますが、ワタシ英語は苦手なのです」
 イリーナさんはそう言って手を口に当てて笑っていた。 
 
作品名:海の向こうから 作家名:八馬八朔