小説が読める!投稿できる!小説家(novelist)の小説投稿コミュニティ!

二次創作小説 https://2.novelist.jp/ | 官能小説 https://r18.novelist.jp/
オンライン小説投稿サイト「novelist.jp(ノベリスト・ジェイピー)」

カクテルの紡ぐ恋歌(うた)Ⅱ

INDEX|6ページ/31ページ|

次のページ前のページ
 


 そういう意味では、宮崎は、防衛省内部における背広組と制服組の勢力争いの最前線に身を投じる、部内スパイのような立場に置かれていることになる。

 残業中に日垣から様々な裏話を聞いていた美紗は、そのことに思い当たり、思わずまじまじと宮崎の顔を見た。宮崎は、美紗の心の内を見透かしたように、すまし顔を返してきた。
「いろいろ面倒な事情はあるけどさ、僕は、今はすっかり日垣1佐のファンだから。彼が異動するまでは、副局長の期待には応えられないわ」
「俺らからしたら嬉しい発言だけど、なんでわざわざ、そう気持ち悪い言い方するんだ」
 嫌そうな顔をする富澤に構わず、宮崎は、「図らずも増員になってめでたしめでたし、でしょ」と話を結んだ。それに、片桐が早口でかみついた。
「全然めでたくないですよ。こっちは、ここの空自ポストを守るために、臨時の穴埋め要員みたいに突然送られて来たんですよ。どう考えたって、尉官の僕がこんなとこ来るなんて、おかしいじゃないですか」
「いいじゃない。上級幹部のブレーン役を尉官のうちに経験できて」
「冗談じゃないですよ。他の連中はほとんど九時五時の環境でCSの勉強してるってのに、ここは拘束時間長いから、勉強する余裕なんて絶対無いし!」
 声が大きくなる片桐を横目に、宮崎は美紗に向かって肩をすくめると、子供がキャスター付きの椅子をいたずらする時のように、床を足でけって、椅子に座ったまま自分の席に戻っていった。宮崎の滑稽な様子とは対照的に、富澤は険のある顔を片桐に向けた。
「よく言うよ。それでも彼女と会う余裕はあるんだろ?」
 痛いところを突かれ、片桐は露骨にむくれ顔になって口をつぐんだ。
「子供が生まれたら、本腰入れて勉強するチャンスもなくなるんだぞ。くだらない文句言ってる暇なんかないだろ。あまり日垣1佐をがっかりさせるな」
 美紗が言い合う二人の間に入るか迷っている間に、富澤は書類ホルダーを持つと、「例の会議に行ってくる」とぶっきらぼうに立ちあがった。彼がオブザーバーで入るセッションの開始時刻が近づいていた。