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エースを狙え

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食べながら色々と話した。
こういう風に先輩と野球の話をするのはかなり久しぶりの事だったので一種の懐かしさを覚えた。
矢代さんは最初に俺に誤った。


「昨日はあんなリードしか出来なくてごめん」と。

「いえ、もっとコントロールよくなるように精進します…」

「ボールに勢いがあったから、多少のミスでも大丈夫だと思ったんだけど、やっぱそれじゃあ駄目なんだよな…」

「はい…ですね。それにもっとチェンジアップも完璧な物にしないといけないですよね。あの程度じゃあまだ実践では使えない…スライダーも、後落ちる球も覚えなきゃいけない……身体もこんな細身じゃあ全然…」

「でもまずはストレートのコントロールな。あの威力のストレートでコントロール完璧になれば、そうそう打たれない。次の実戦はオープン戦直前だからそれまでに少しでもコントロールよくしていこう」

「でもシート打撃とかはあるんですよね?」

「あれは高卒新人はやらないから、ウチでは」

「そうなんですか…」

「不満か?」

「いえ、そうでは…」

「まあ、基本高卒は体造りからだから仕方ないかもな。幾ら即戦力級とはいえ」

「即戦力って大袈裟な…今年はシューズの三浦くらいでしょう…」


二人は黙った。何故黙ったかは判らない。


「…お前だってアイツと同じ世代ナンバーワンだろう」

「…投げてる球も遜色ないと思うぞ」

「謙遜はいりません。自分が一番分かってますから…あんな三年連続春夏連覇しちゃうような化物と比べられたら堪ったもんじゃありませんから……」

「…そうか」

「だがプロに入れば関係なくなるぜ?そういうのは最初だけだ。結果がついて来なければ何の意味も無くなる世界だからな」

「…厳しいんですね…」

「ああ」


そんな事を話している内に全ての料理を平らげた。
流石にお腹いっぱいになった。食後にはコーヒーが付いて来た。これはおまけらしい。コーヒーを飲んだ後、お会計を済まし、キャンプ寮まで戻った。部屋に帰るとナツさんが既に就寝していた。お酒の匂いが充満していたが何処へ行って来たのか…。でも気晴らしの付き合いというのは相当ストレスの溜まるものだと知っているだけに、きっとナツさん自身もストレス解消をしていたんだろうと思った。
俺は寮内にある疲労に利く温泉に浸かりながら明日やる事を考えて、それをメモ帳にメモしてから、午後10時頃に就寝した。

作品名:エースを狙え 作家名:本宮麗果