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吉葉ひろし
吉葉ひろし
novelistID. 32011
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純愛

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笹舟


梅雨に入り久しぶりに青空が見えた。私は茶々を連れて散歩に出た。どの犬もそうであるが茶々は散歩が大好きである。公園でボール遊びでもしてみようかと、5分ほどで行ける公園に出かけた。ところが日曜日とあって少年野球をしていた。これではボール遊びは出来ない。
公園の外周を歩くことにした。その散歩道は土であった.そのためにところどころに水が溜まっていた。柔らかな茶々の足の毛は雨水に濡れていた。
いくらリードを抑えても茶々は水溜りのなかを歩いて行く。少し先に大きな水溜りが出来ていた。これに入られてはシャンプーをしなくてはならない。
私は茶々を抱きかかえた。水溜りの脇を通ると、その水は青空のように青かった。いや青空が映って青かったのである。その水溜りの近くに笹が生えていた。
私は思わず、その笹の葉をもぎった。
茶々のリードをベンチに縛り、私は笹舟を作った。
茶々を置いたまま水溜りに笹舟を浮かべた。
その小さな水溜りは、大きな湖になった。手を入れて水をかき回すと、笹舟は大きく揺れた。
「怖い」裕子の声が聞こえる。
中禅寺湖で私は初めてモーターボートを操縦した。裕子を乗せていた。
「どんなにカーブしても転覆はしません」
店の人の説明に安心して、私は右に左にと舵を切った。そのたびに裕子は悲鳴をあげた。そのうちに泣きだした。
私はそれを見てやり過ぎたと感じた。でもその時はすでに裕子は私から別れる決心をした後であった。
「怖がることを面白がるあなたが許せない」
茶々が吠えはじめた。私は笹舟を浮かべたまま、水溜りから離れた。
青い空を見たら、そのなかに裕子が見えるような気がしたが、梅雨時の空はすでに曇りだしていた。
ハンカチを持たずに来たので濡れた手をシャツで拭きながら、茶々と歩きだした。
何時か今日の事もふと思い出すのかもしれないな・・・そんなことを思いながら・・
作品名:純愛 作家名:吉葉ひろし