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吉葉ひろし
吉葉ひろし
novelistID. 32011
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純愛

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ブランコ


この公園は愛犬の散歩で良く訪れる。
冬の季節はほとんど人影はない。野球場と遊園地がある。
祐二はふとブランコに乗ってみたくなった。
朝の7時である。まだブランコの板は夜露で湿っていた。
テッシュペーパーで板を拭いた。
埃で茶色になるほどテッシュは汚れた。
愛犬を抱き上げブランコに座った。
子供用なので膝を伸ばさなくてはならなかった。
しばらく座っていたが、ゆらしてみたくなった。
愛犬をブランコの支柱に結わえた。
なぜなら、ブランコを揺らすには、足が地面に触れてしまい、足を水平にしなくてはならないからだ。それにはしっかりと両手で鎖を握らなければならない。
祐二は後ずさりして地面から足を離した。
身体が前に運ばれた。
朝の太陽が見えた。少し眩しかった。
後ろに動き出すと恐怖まではいかないが、気持ちの良いものではなかった。
前に動き出す時に腰に力を入れた。
子供の時にそうしたような記憶があったのだ。
ブランコはさっきよりも少し大きく揺れた。
繰り返して揺らしてみると、振り幅は大きくなり限界かと思った。
祐二は楽しくなった。同時に満足でもあった。
ブランコは何回か前後を往復しながら揺れが小さくなった。
足を地面につけて静止した。


散歩から帰り、パソコンを開いた。
弘子からのメールは届いてはいなかった。
まだ彼女とのメールの交換は1度しかなかった。
教職員のメーデー参加の時に隣に立っていたのが彼女であった。
大学の時にサークルで何度か見た程度であったが、祐二はには忘れられない思い出があった。
サークルは文学であったが、彼女の脚本をやることにしたのである。
その中でキスの場面があった。
無論稽古の時はその雰囲気だけであった。
文化祭の本番もそのようにすると祐二は思っていた。
それが彼女は祐二の唇に触れたのであった。
祐二はセリフを忘れてしまった。
「愛はここから永遠に途切れはしない」
と言うはずなのに
「このキスが現実であって欲しいと願う」
と言ってしまったのである。
流石に彼女はアドリブでつじつまを合わせた。
祐二はそのことでサークルを止めてしまった。
そして、偶然とはいえまた会ったのだ。
彼女はY県の高校に勤務していた。
祐二は非常勤講師を2年ほどしたが事務職の試験に受かりその道に進んだ。
挫折であったかもしれない。
生活のためにやむを得ない道であった。
祐二は付き合っていた女性に子供が出来たのであった。

祐二は弘子が教師をしていた事が嬉しかった。
自分の夢を実現してくれたように感じた。
それほどの付き合いもなかったのに、何故か彼女は心のどこかに住みついていた。
それからしばらくして、彼女はまだ独身であると知った。
祐二はその事を知った日に一人で公園に出かけた。
ブランコに乗りたくなったのだ。
どちらが未来でどちらが過去なのか・・・
どちらが幸せでどちらが不幸なのか・・・
揺れずにこのまま止まっていればいいのだろうかと・・・
祐二は間違ったセリフを思い出しながら、ぶらんこに揺れていた。

作品名:純愛 作家名:吉葉ひろし