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司令官は名古屋嬢 第6話 『一部』

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「イタタ、イタタ!」
「大須さん。どこかで座っていたほうが……」
そこに大須が、上社に肩を貸してもらいながら、よろよろとやって来た。頭を押さえて苦しそうだが、命に別状は無い様子だ。
「な、なぜだ!?」
彼女の死を確信していた男は、口をあんぐりと開けて驚いている……。なにせ、頭部に銃弾が命中したはずだからだ。帽子の後頭部には、しっかりと穴ができている。

「どうしてくれるのよ! 帽子に穴が空いちゃったじゃない!」
大須は帽子を外し、うつ伏せで倒れている男に突きつけた。布地にできた穴の中に、ひしゃげた銃弾が見える。
「チクショウ! 防弾だったのか!」
「特注品で高いのよコレ!」
彼女の帽子は、一見すると、若い女性向けの物だが、特殊な防弾繊維が織り込んであったのだ。異次元で製造された護身用の帽子で、高級品なのは確かだった。
「しかも、あと少しで取り損なっちゃったし!」
それは仕方がないことである。

「見せしめに、ここで処刑しますか?」
平然と恐ろしい言葉を言い放つ上社。
「いや、世界保安省(CROSSの秘密警察)に預けましょう。拳銃の入手ルートや、私の居所がわかった理由を知りたいし」
大須はそう言うと、男を拘束している兵士2人に、連行するよう命令した。
 暗殺未遂犯である男は、無理やり引っ張り上げられる形で立ち上がる。大須は世界保安省に、引き渡しの電話をし始めた。

「ん? なんだアレ?」
手持無沙汰の上社の視線が、「ある生物」で止まった……。
 その生物は、吹き抜けの通路の先からこちらをじっと見ている。高さは1メートル半ほどで、大きな銀玉に3本の足が生えているような感じだ。そして、何よりも不気味だった……。少なくとも、その生物が買い物客でないことは明白だ。
「おいおい、異次元生物じゃないか? ペットショップから脱走したのか?」
「しかし、あんなの売っていたかな?」
存在に気づいた兵士たち。威嚇してやろうと思ったのか、拳銃を抜く。

「気をつけて!!! ただの異次元生物じゃないわ!!!」
「たぶん、その男が召喚した悪魔だ!!!」
察しの早い大須と東山は叫んだ。
「おい、パンチャー!!! こいつら全員殺してしまえ!!!」
男も負けじと叫ぶ……。
 やはり、この男が召喚した悪魔だ。パンチャー(『穴あけパンチ』という意味)という名前らしい。
「ガチガチガチ!」
ヤツが口の中から発するその音を、上社はトイレで聞いたと気づいた……。男と約束した時間が来るまで、あそこに隠れていたのだろう。