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司令官は名古屋嬢 第6話 『一部』

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第1章 隔て



   第6話 『一部』

【時間軸】…異次元暦42735年 2月10日 朝
【場所】…758号世界 名神高速道路
______________________________

 中京都軍の車列が、無人で静かな名神高速道路を、猛スピードで突っ走っていた。ちょうど岐阜県の羽島市に入ったあたりだ。

 彼らは、この世界の首都であり、この国の今の首都でもある中京都へ向かっている。
 その車列の中には、八事が運転している車(カローラ・アクシオ)も含まれている。先頭を走るその車には、上社鳴海と東山が後部座席に乗っていた。彼らは、大阪での任務を終えての帰還途中であった。

「八事って、対ライフライン部隊を率いているんだって?」
上社が八事に尋ねる。
 彼女はただの狙撃兵ではなく、中京都軍の『対ライフライン部隊』のリーダーでもあるのだ。今は私服姿だが、彼女の軍服には、『対ライフライン部隊』の徽章(マーク)が縫い付けてある。
「……そうだけど?」
八事は、今さら聞くことかという素っ気ない口調で返事する。
「今まであまり興味無かったんだけど、どういう任務をするの?」
どうやら、上社は中京都軍の将校のクセに、自軍の部隊のことをよく知らないらしい……。横にいる東山は知っているらしく、上社に呆れていた……。
「……言葉で説明するのはめんどうね」
八事はそれだけ言うと、口を閉じた。

 中京都の超高層ビル群が遠くに見えてきたころ、発展途上国のスラムのような光景が道路の両側に広がってきた……。木曽川沿いにそのスラムは広がっており、よどんだ空気に満ちている……。
 工事現場の簡易宿泊所みたいな住居や、キャンピングカーの住居はまだいいほうで、廃材などを集めて建てたボロ小屋が多い。ひどいのになると、レジャーシートを地面に敷いただけの住宅(?)もある……。
 この悲惨な形で拡大を続けるスラムとは対照的に、木曽川を挟んで対岸にある中京都は、急速な発展を続けている……。異次元進出による恩恵を唯一得られるからだ。

 スラムの住民たちは、上社たち中京都軍の車列を恨めし気に睨んでいた……。武器を構えたりといった不穏当な行動はしていないものの、こみ上げる怒りを堪えているという様子だ……。
 だが、我慢できない人間というのはどこにでもいるらしく、1人の若い男が道路に立ち入ってきた……。その男は痩せた両腕で、サビついた鉄パイプを引きずっており、走ってくる上社たちの車列の前に立ち塞がる。男は覚悟を決めた様子で、猛スピードで迫ってくる車列に、鉄パイプの先を向けた。
 しかし、先頭車両を運転する八事は顔色一つ変えない……