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海野ごはん
海野ごはん
novelistID. 29750
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大阪の雨・・放かされて

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店はカウンター席10席 BOX席2つの何処にでもあるスナックだ。
3年前、達夫が彩子と付き合い始めた時、買ってあげたお店だ。他に若いホステスが2名いた。
達夫がBOX席の奥に座ると、緊張感がありありと見えるホステスの一人がおしぼりを持ってきた。
「あっ、あんまりかまへんでいいからビールだけ持ってきてくれるか」
彩子がビールとグラスを持ってやって来た。普段なら笑いながらビールを注ぎ愛想を振り撒き始めるのだが、黙って彩子は達夫のグラスにビールを注ぎ始めた。
「そんで?」
「そんな言い方ないやろ、なんか棘があるな」
「何処、行っとったん」
「あちこちや」
「あちこちて?」
「いろいろや・・・まぁ、すまんかったな」
「なんで、謝るのん。悪い事してきたんか」
達夫は彩子の機嫌を取るわけではないが、言いにくいことを言わなければならないので困った顔をした。
「あんな‥・言いにくいんやけど店辞めてくれへんか」達夫は彩子の目から逃れるようにして言った。
「なんやのん急に現れて!」彩子は普段出さない大きな声を出して達夫を睨みつけた。
「すまんな、金がいるんや。売ってくれへんか」
「ここは私の店や。なに急にあほらしいこと言うてんのん」彩子の声はあきらかに怒りを含んでいた。
「すまんと思うとるけど、仕方ないんや」
「いややっ!」彩子は達夫のグラスを取り上げるとビールを飲み干した。
「金がいるんや。ここは俺の名義だろ・・・すまんな」
「あんた、何処で何しとったん?話すのが当たり前やろ。急に出てってしもうて、いきなり帰ってきて店辞めろとかよう言えるな」

「彩子、俺達何年つきおうたんやっけ」
「長~~い3年や」
「多分ここ売ったら500万は入る。3年分300万やるさかい」
彩子は達夫の顔を驚いて睨みつけ、さらに大きな声で言った。
「なんやのん、たった200万欲しくてそれを言いに来たんか!えろーちっぽけになったなあんた!」
「・・・・」
「ほんなら、200万やるさかい店も私の名義にして、もう現れんとって頂戴!」
「彩子・・・すまんな金がいるんや」
「あんた、何処で何してたん?ギャンブルか?女か」
「・・・・」
「言えへんのか?」
達夫は立ち上がり彩子に「ほな、明日来るわ。用意しとってくれるか?」と言った。

「あんた、なんも言うてくれへんの?」彩子も立ち上がった。
「すまんな、こんないい女放ったらかして・・・」
「なにがいい女や、かっこつけんといて」

「彩子っ!」達夫は彩子の肩を引き寄せると抱きしめた。
「あんた何しとったん・・・何があったん?」彩子は思わず惹き寄せられたことで涙が溢れてきた。
達夫は肩を震わす彩子を引き剥がすと、しょうもない男なんやとつぶやいて彩子の店を出た。

ホステス2名の女の子たちは声をかけることも出来ず、心配な顔で立ち往生していた。
彩子がBOX席で泣くのを心配した客二人と見守るしかなかった。